2014 Fiscal Year Annual Research Report
miRNAを介したc-Srcによるがん化の制御機構の解明
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14J06451
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松山 麗伊 大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | がん遺伝子Src / miRNA / ノックアウトマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
非受容体型チロシンキナーゼであるc-Srcは、多くのヒト腫瘍において発現および活性の亢進が見られ、浸潤・転移などのがん悪性化形質の獲得に関わっている。しかし、その詳細なメカニズムは未だ不明な点が多く残されている。我々はこれまで、いくつかのmiRNAがSrcがん化制御に関わることを明らかにしてきた。しかし、これまでの解析はすべて細胞レベルであり、これらの制御が実際に個体レベルにおいても機能しているかは不明である。そこで本研究では、Srcがん化制御に関わるmiRNAの個体レベルでの生理的意義の解明を目指す。この目的のため、Srcによるがん化を抑制するmiR-503/424のコンディショナルノックアウト(CKO)マウスを作製し、miR-503/424欠失による個体レベルでのがん化への影響について検討する。 本研究により、個体レベルにおけるmiRNAを介したがん化制御およびそのメカニズムが明らかとなれば、miRNAの重要性についての理解を進展させるだけでなく、それらを標的とした新規がん治療薬の開発に貢献できると期待される。 本年度は、Srcがん化制御に関わるmiR-503/424のCKOマウスの作製を行った。miR-503/424の遺伝子配列をLoxPで挟んだターゲッティングベクターが導入されたES細胞をMMRRCから購入し、キメラマウスを作製した。次に、FRTマウスとの交配によりlac-Z-neoカセットを除いた。その後、villin-Creマウスと交配させ、miR-503/424の腸管特異的ノックアウトマウスを得た。現在1ヶ月齢程度であるが、目視観察による外見上の差異は見られていない。今後、得られたマウスを腸管に多数の腫瘍を形成するApcノックアウトマウスと交配させることで、miR-503/424の個体レベルでの大腸がんにおける機能を解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、miRNAを介したがん化制御機構に関する研究を行い、miR-27bがPaxillinおよびARFGEF1の発現を制御することで、Srcを含む細胞接着斑の機能を調節しがん化を抑制することを明らかにした。現在、これらの研究成果を論文としてまとめ、科学雑誌に投稿中である。また、miRNAを介したSrcがん化制御の個体レベルにおける生理的意義を明らかにするため、Srcによるがん化を抑制するmiR-503/424のノックアウトマウスの作製を進め、順調に産仔を得ている。今年度中には目的のノックアウトマウスの作製を完了し、miRNAが個体レベルにおいてもがん化を抑制するか検証する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト大腸がんでは、がんの進行に伴いSrcの発現・活性が亢進している。逆に、miR-503/424は正常組織に比べて大腸がん組織で発現が低下している。また、miR-503/424の標的遺伝子であるRictorは、miR-503/424と逆相関的にがん組織で発現が高くなっている。これらのことから、ヒト大腸がんでは、Srcの発現・活性の増加に伴いmiR-503/424の発現が低下することにより、Rictorの発現が増加し、がん悪性化に至ると考えられる。また、細胞レベルの解析から、miR-503/424は腫瘍形成を顕著に抑制することが見出された。このmiR-503/424による腫瘍抑制効果が生体内においても機能しているかを検討するため、得られたmiR-503/424腸管特異的ノックアウトマウスを大腸がん抑制遺伝子Apcノックアウトマウスと交配させることで大腸に腫瘍を形成させ、その形成頻度および大きさをコントロールマウスとmiR-503/424 CKOマウス間で比較する。 また、miR-503/424 flox/floxマウスをCAG-Creマウスと交配させることで、miR-503/424の全身ノックアウトマウスを作製し、発生・発育におけるmiR-503/424の機能を解析する。
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Research Products
(2 results)