2015 Fiscal Year Annual Research Report
魚類由来反磁性結晶のDNA固定による光学素子化と磁気マニピュレーション法の構築
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14J06583
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
水川 友里 広島大学, 先端物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 生体由来グアニン結晶 / 磁場配向 / マイクロミラー / 核酸塩基 / DNA / バイオミメティクス / 磁気マニピュレーション / 反磁性磁化率異方性 |
Outline of Annual Research Achievements |
・CCDカメラ鏡筒を傾斜させた際の磁場下での生体由来グアニン結晶の光反射変化 生体由来グアニン結晶が封入されたチャンバーを作製し,光照射を水平面に対し25度で入射できるCCDカメラの先端にチャンバーを固定した.カメラの鏡筒を水平面に対し10~40度までの間で傾斜させた際の,磁場印加前後における結晶からの光反射変化を顕微観察した.結果,鏡筒の傾斜が0度の場合は結晶からの光反射が抑制された.しかし,10,15,20度の傾斜角度では,光反射は逆に増強した.さらに,25,30,40度の場合は,瞬間的に光反射の増強が生じ,その後光反射は抑制された.この実験から,鏡筒の傾斜角度が15度の際に最も光反射が増強するということが明らかとなり,25~40度の傾斜角度では結晶が捻るような磁気回転を生じるために,瞬間的な光反射の増強が生じるものと推測された. ・生体由来グアニン結晶とDNAによる溶液界面上での反磁性マイクロミラーシートの作製 生体由来グアニン結晶同士をDNAで繋いだパラボラ型・屏風型ミラーを作製するための基礎検討として,2種類の溶液における界面上でグアニン結晶とDNAによるミラーシートを作製した.セル内にフロリナート溶液を入れ,調整した混合溶液を上から静かに入れて2種類の溶液による界面を作製した.そして重力を利用して,その界面上にDNAとグアニン結晶によるミラーシートを作製することに成功した. ・反磁性マイクロマニピュレーション法による生体由来グアニン結晶の光反射特性評価 グアニン結晶を弱磁場で3次元的回転制御する手法から,生体由来グアニン結晶1枚単位での光反射特性を解析した.2種類の磁力線方向を組み合わせて,結晶1枚の光反射特性を評価するための3次元的反磁性マイクロマニピュレーション法を構築し,生体由来グアニン結晶1枚において光反射が生じる結晶面角度の範囲を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の進捗状況としては,1年度目でガラス基板に生体由来グアニン結晶の側面(結晶(001)面)をDNAで固定する手法を構築し,さらに固定した結晶の(102)面の角度を磁気で制御することに世界に先駆けて成功した.また,高輝度赤外分光FTIRと赤外ATR法によって,生体由来グアニン結晶の表面および内部の分子配列を明らかにし,核酸塩基による人工結晶の作製およびその磁気回転現象を明らかにした. さらに2年度目では,2つの溶液で形成される界面上にDNAと生体由来グアニン結晶によるミラーシートの作製を行った.さらに2種類の磁力線を組み合わせて3次元的に磁気回転させる,反磁性マイクロマニピュレーション技術を構築し,生体由来グアニン結晶の3次元的磁気制御で光反射特性の評価を行うことに成功した. 指導教員からは平成27年度の報告書にて,“溶液界面にマイクロミラーシートを形成する独自の手法を開発し,生体由来グアニン結晶のための光反射評価の基礎的手法を構築した.これより,DC1の研究課題を概ね乗り越えたといえるため,期待以上の成果を出している”との評価を頂いた. さらに,2種類の磁力線を組み合わせた3次元的反磁性マイクロマニピュレーション技術による,生体由来グアニン結晶の光反射特性評価法を中心とした内容で,早期で学位取得に至ることができた. これらを総合して,現在の進捗状況として“期待以上の成果を出し,概ね本課題を乗り越えた”と判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の当初の計画としては,磁場中顕微観察システムを用いて,DNA固定したグアニン結晶集団の磁場中における挙動観察を行い,2年目に作成した光反射鏡モデルを検証し,集光率向上のための改良を進めることが,主な実験計画の内容であった. しかし,“DC1の研究課題を概ね乗り越えた”と自他ともに認めるため,指導教員から指摘のあった“自身の研究のオリジナリティを強化する”という点においてさらに研鑽を深めるべく,これまでの研究分野から少し離れた,電磁気と半導体,量子力学の複合領域であるスピントロニクス研究を勉強するため,今年7月から2月末まで英国のヨーク大学の廣畑研究室に渡航する予定である. こちらの研究室で,生体由来グアニン結晶を用いた新しい3次元的な磁気制御法,および結晶集団の集光率を向上させるような磁気制御法を,廣畑研究室のナノ・スピンモーターを用いることで見出せる可能性がある.そのため今後の研究の推進方策として,英国ヨーク大学に渡航してナノ・スピンモーター関連の研究を学びつつ,生体由来グアニン結晶を用いた新しい3次元的な磁気制御法を模索する予定である.電圧変化測定や薄膜作製,微細加工技術,面内スピンバルブ作製等を習得し,今後の発展的な研究推進に必要な知識・技術を習得する予定である. また,2つの溶液界面上でグアニン結晶とDNAを用いてミラーシートを作成する試みを平成27年度の研究で成功させた.そのため,結晶を磁場により一方向に整列させながら結晶シートを作製することで,より高い光反射性を有するミラーシートを作製し,磁場によって作成したミラーシートの光反射を制御するという,さらに発展的な研究を追加で予定している.
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Remarks |
出願中の特許の補足を以下に示す. 種別:特許(新規性喪失の例外適用,委託研究),出願人:国立大学法人広島大学
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Research Products
(11 results)