2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14J06845
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
坂谷 尚哉 総合研究大学院大学, 物理科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 粉体 / 熱伝導率 / 微惑星 |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽系の過去から現在において、粉体物質は普遍的に存在し、太陽系天体の進化に重要な役割を果たしてきた。例えば、太陽系初期に形成した微惑星は、星雲中のダストの集合体であったと考えら得ており、また、現在の月や小惑星などの表層はレゴリスと呼ばれる岩石の粉砕物で覆われている。このような粉体物質の熱伝導率を正しく制約することが、天体の熱的進化を理解する上で重要であるが、真空下での粉体の熱伝導率は粒径や空隙率など様々なパラメータに依存し、それら依存性に関しての実験的、理論的な理解は不十分であった。本研究は、真空下において粉体サンプルの熱伝導率を実測し、パラメータ依存性を調査することにより、熱輸送メカニズムの実験的な理解、および惑星環境に適用可能な理論モデルの構築を行うことを目指したものである。 本年度行った研究内容について以下にまとめる。 ・熱伝導率の空隙率依存性の実験的調査 粒径5μmのガラスビーズを用い、熱伝導率の空隙率依存性に関する実験を行った。その結果、空隙率が0.49から0.86に高くなるにつれて、熱伝導率は0.02 W/mKから0.001 W/mKまで減少することを明らかにした。 ・粉体熱伝導率の理論モデルの構築 上記実験に加えて、これまで私が蓄積してきた実験データを定量的に説明するため、均一サイズ球体の熱伝導率に関する理論モデルを構築した。本研究のモデルはファクター3以内で実験値と一致した。 ・微惑星の熱進化計算 上記の熱伝導率モデルを用いて微惑星の熱伝導率を推定し、熱進化の数値計算を行った。ダストの焼結によるネックの成長、およびそれに伴う熱伝導率の変化を同時に取り扱うことにより、半径400 m以上の微惑星は形成から最短7万年で焼結が起きることを明らかにした。これは、微惑星の衝突合体・破壊プロセスによる惑星形成論に対する重要な知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初本年度中に行う予定であった熱伝導率の粒子形状、粒径分布依存性の調査実験は行わなかった。まず、これまでの実験で扱ってきた均一サイズの球体に対しての熱伝導率モデルを構築し、それを粒子形状が球でない場合、粒子サイズ分布を持つ場合に適用できるよう、改良していく方が適切であると判断したためである。一方で、平成27年度に行う予定であった微惑星の熱進化計算を前倒しで実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
熱伝導率の粒子形状、粒径分布依存性を実験的に調査する。それらの実験結果に従って、今年度構築した理論モデルに粒子形状、粒径分布の影響を表すパラメータを適切な形で導入する。ロシアの月探査計画 Luna で地球に持ち帰った月レゴリスサンプルの入手の目処が立ったため、それを用いた熱伝導率測定実験を行う。しかし、サンプルは100 mg程度の微少量であるため、微少サンプルに対して測定可能なよう、実験手法の改良を行う。これらの実験結果、および修正された熱伝導率モデルを用いて、月表層レゴリスの熱伝導率構造を推定する。
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Research Products
(3 results)