2015 Fiscal Year Annual Research Report
疎水性タグを用いたヒトインスリンの液相完全化学合成
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14J06938
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
藤田 裕子 東京農工大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 疎水性タグ / ペプチド環化 / コンフォメーション変化 / アルカリ金属塩 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年のB鎖部分配列中に疎水性タグを導入しA鎖フラグメントとの間で分子間SS架橋形成を行うヒトインスリンの部分合成に関する実験から、疎水性タグの配列内への導入によってコンフォメーションが変化し反応性に影響を及ぼしていることが示唆された。そこで当該年度ではモデルペプチドの環化反応から疎水性タグのペプチド結合への導入位置に関するペプチドのコンフォメーションへの影響を評価することにした。6位のPheと5位のGly間のアミド窒素に疎水性タグを導入した環状ヘプタペプチドMahafacyclin B cyclo (-Phe7-Phe6-Gly5-Thr4-Phe3-Phe2-Gly1-)の前駆体配列を得るための合成計画をデザインし合成を行った後、環化反応の反応性に関して2位のPheと1位のGly間に導入した場合[Y. Fujita et al., Org. Lett., 2013, 15(6), 1155-1157.]と比較した。その結果、6位のPheと5位のGly間に導入した場合において環化時間の顕著な短縮および二量化形成の抑制が確認された。また生じた副産物の解析から疎水性タグの存在によって環化前駆体のコンフォマー間に相互変換が容易になされない程度のエネルギーギャップが生じていることが示唆された。この環化反応に対して種々の金属塩化物を添加したところ、アルカリ金属塩に環化収率を高める効果が認められた。上記の結果は、疎水性タグを導入する位置によってペプチド骨格のコンフォメーションが大きく変化していることを示すものであり、長鎖ペプチド合成において回避しなければならない溶解性の低下という問題に対して疎水性タグを配列内に導入するという本研究の基本戦略を再考する上で、どの位置に(合成上どのタイミングで)疎水性タグを配置すべきか、ということに対して有益な情報を与えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の研究は、前年度の合成途中で直面した当初想定していなかった問題に対する解明を目的としたものであるため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きインスリンの部分配列の合成を行う。部分配列合成およびA鎖20位のCysとB鎖18位のCys間の分子間SS架橋反応を行うにあたり、ペプチドの反応溶媒への溶解性を上げる目的と疎水性タグを反応点から遠ざけたほうが反応に影響を与えないのではないかという想定から、疎水性タグの導入位置をC末端の他にB鎖フラグメントの23位のArgと22位のGly間のペプチド結合にしたが、SS架橋形成反応を行う前にペプチド配列中に疎水性タグを導入しない、あるいは18位のCysと19位のGly間に導入するなど導入位置については合成過程の溶解性を見ながらさらに検討していく必要があると考えられる。また金属イオンの効果についてはペプチドを構成するアミノ酸やペプチド長によって変わる可能性があることから、反応性の問題に直面した際には様々な金属塩を添加してみてそれぞれの効果を確認する必要がある。
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Research Products
(1 results)