2014 Fiscal Year Annual Research Report
DNA鎖間架橋除去に働くFAN1ヌクレアーゼの損傷塩基対除去機構
Project/Area Number |
14J06948
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
高橋 大介 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | FAN1ヌクレアーゼ / DNA鎖間架橋 / FANCI-FANCD2(ID)複合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、DNA鎖間架橋(Interstrand crosslink: ICL)除去に重要なFAN1ヌクレアーゼの機能を明らかにし、ICL除去機構を解明することを目的としている。ICLの除去において中心的な役割を果たす遺伝子産物が、FANCI及びFANCD2である。FAN1は、モノユビキチン化されたFANCI-FANCD2(ID)複合体によってICL部位に呼び込まれ、ID複合体と共同的に損傷塩基対を除去すると考えられている。しかし、FAN1によるICLの切り出し及びID複合体との共同の分子機構は未だ明らかになっていない。 FAN1とID複合体の共同の分子機構を明らかにするには、まず、FANCI及びFANCD2を容易に高純度かつ大量に精製する必要がある。これらのタンパク質は高分子量であるため、大腸菌発現系を用いてリコンビナントタンパク質として精製を行うことは困難であり、これまで昆虫細胞-バキュロウィルス発現系を用いて精製されてきた。しかし、バクミドやウィルスの作製に時間を要するため、これは簡便な精製法とは言い難かった。そこで、大腸菌発現系を用いた精製法に着目し、まず発現宿主となる大腸菌株の検討をし、低温度下での発現誘導を行った。その結果、この条件下ではFANCI及びFANCD2の発現が著増することを見いだした。FANCIに関しては、アフィニティータグの検討を行い、His6-SUMOタグを採用することで、FANCIの可溶化効率を向上させることに成功した。その後、精製カラムの検討を行い、FANCI及びFANCD2を容易に高純度かつ大量に精製することに成功した。 今後は、ID複合体をDNAビーズ上でモノユビキチン化する系を確立し、FAN1のリクルートメントにおけるユビキチンの役割を解明する。また、この系を用いて、FAN1のDNA切断におけるユビキチン化ID複合体の意義を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ICL除去機構を解明するためには、FAN1によるICLの切り出し及びFANCI-FANCD2(ID)複合体との共同の分子機構を明らかにすることが求められる。そのためには、FANCI及びFANCD2を短時間で高純度かつ大量に精製する必要がある。これを達成するため、申請者は大腸菌発現系を用いたFANCI及びFANCD2の精製系を新規に確立した。この方法で精製したFANCI及びFANCD2は、昆虫細胞-バキュロウィルス発現系を用いて精製したそれらと同様に、分岐構造を持つDNAに優先的に結合することをゲルシフトアッセイ法により確認している。また、FANCIとFANCD2を等モルずつ混合させると、安定なヘテロ二量体を形成することから、これらは正しくフォールディングされた機能的なヘテロ二量体を形成するタンパク質であることが確認された。今後、これらのタンパク質を用いて、FAN1との共同機構を明らかにする。
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Strategy for Future Research Activity |
FAN1のICL部位へのリクルート機構を解明するために、ID複合体をDNAビーズ上でモノユビキチン化する系を確立する。FAN1は、ユビキチン結合モチーフを介してモノユビキチン化ID複合体に結合するため、精製したFAN1およびモノユビキチン化ID複合体-DNAビーズを用いることで、FAN1のリクルートメントにおけるユビキチンの役割を解明する。また、精製したFAN1とモノユビキチン化ID複合体に様々なDNA基質を混合して、FAN1によるDNA切断反応を試験管内で再構成する。この解析によって、FAN1のDNA切断におけるユビキチン化ID複合体の意義を明らかにする。また、DNA結合能が低下したFAN1変異体を、FAN1欠損DT40細胞に導入して、コロニー形成アッセイを行う。さらに、マイトマイシンCなどのDNA鎖間架橋剤への感受性を解析する。これら解析によって、ICL修復における、FAN1のDNA結合能の役割を明らかにする。これまでに得られた解析結果から、FAN1によるDNA鎖間架橋除去のメカニズムを考察し、FA経路における損傷塩基対除去機構の理解へとつなげる。
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Research Products
(3 results)