2014 Fiscal Year Annual Research Report
舌下免疫寛容における制御性 T 細胞誘導機構の解明
Project/Area Number |
14J07005
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田中 志典 東北大学, 歯学研究科, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
Keywords | 舌下免疫療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
舌下免疫療法は、抗原(アレルゲン)を舌下粘膜から吸収させ、全身に免疫寛容を誘導し症状の改善を図る、簡易かつ有効なアレルギー治療法である。その作用機序として、制御性 T 細胞 (Treg) の関与が考えられているが、実際に抗原舌下投与により Treg を誘導できるか否か明らかでなかった。そこで、マウスモデルを用いて Treg の誘導を試みた(in vivo Treg 誘導実験)。抗原舌下投与後、舌下粘膜の所属リンパ節である顎下リンパ節においてのみ抗原特異的 Treg 分化誘導を検出できた。耳リンパ節や腸間膜リンパ節といった非所属リンパ節では抗原特異的 Treg 分化誘導は起こらなかった。 次に、Treg 誘導能を有する口腔粘膜抗原提示細胞の同定に取り組んだ。腸管樹状細胞は効率的に Treg 誘導を行うことが知られている。腸管樹状細胞はレチノイン酸合成酵素を発現しており、レチノイン酸は Treg 誘導を促進する。そこで口腔粘膜細胞のレチノイン酸合成能を解析したところ、特定の樹状細胞が高いレチノイン酸合成能を示すことを発見した。これらレチノイン酸産生性樹状細胞を in vitro で抗原の存在下、抗原特異的ナイーブ CD4+ T 細胞と共培養したところ (in vitro Treg 誘導実験)、効率的に Treg が分化誘導された。 以上の結果から、抗原舌下投与により顎下リンパ節で抗原特異的 Treg が誘導されること、口腔粘膜のレチノイン酸産生性樹状細胞が Treg 誘導能を有すること、が明らかとなった。本研究は減感作療法における舌下経路の有効性を支持するものであり、さらに、口腔レチノイン酸産生性樹状細胞を標的とすることで舌下免疫療法の治療効果を高められる可能性があることを示唆している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では抗原舌下投与後の抗原特異的 Treg 分化とそれに引き続く増殖が起こる組織、さらにそれぞれの過程に関与する抗原提示細胞サブセットの同定を目的としていた。そして現在までに、Treg 分化が起こる組織(顎下リンパ節)および Treg 分化に関与する抗原提示細胞サブセット(口腔レチノイン酸産生性樹状細胞)の同定に成功した。モデル抗原として卵白アルブミンを選択し、卵白アルブミン特異的 T 細胞受容体を発現する OT-II CD4+ T 細胞を in vivo および in vitro Treg 誘導実験に活用することで実験を効率的に進めることができた。当初の年次計画における2年目(次年度)の内容に踏み込んでおり、期待以上に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は Treg 増殖が起こる組織とその過程に関与する抗原提示細胞サブセットの同定を目的として研究を推進する。研究計画を変更する必要はないと考えられる。また、現在までに得られた研究成果に関して論文発表予定である。
|
Research Products
(3 results)