2014 Fiscal Year Annual Research Report
多重惑星系における軌道進化の観測的・理論的解明とその物質輸送過程への示唆
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14J07182
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
増田 賢人 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 太陽系外惑星 / トランジット / ホットジュピター / スピン軌道角 |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽系における惑星の公転軸は、太陽の自転軸と約7度の範囲ですべて揃っていることが知られる。一方、太陽系外のホットジュピター(わずか数日という非常に短い公転周期をもつ木星型惑星)におけるスピン軌道角(主星自転軸と惑星公転軸のなす角)は、太陽系とは対照的に広範な分布をもつことが明らかとなっている。このような特徴は、未解明な点の多いホットジュピターの形成過程を反映するものと考えられている。本年度は、トランジット惑星系におけるスピン軌道角を測光データを用いて測定する手法として、(i) 星震学を用いるもの (ii) 重力減光と呼ばれる現象を用いるもの の2つを主に研究した。その詳細は以下の通りである。 (i) 星震学(星の振動による光度変化を解析し、星の内部構造を探る手法)を用いると、スピン軌道角の視線方向への射影成分が推定できる。これを従来の分光観測によるスピン軌道角の天球面成分と組みあわせることで、トランジット惑星系のスピン軌道角を精度よく制限する方法論の確立を行い、得られた手法を実際の惑星系に適用することでその有効性を実証した。 (ii) 星の表面輝度はその有効表面重力に比例するため、高速自転星の場合、遠心力の影響で赤道付近は極付近と比べて暗くなる(重力減光)。このような星の前を惑星が横切る(トランジットする)と、主星の極と惑星軌道の位置関係に応じて主星の減光曲線が変形するため、そこからスピン軌道角を推定することができる。ところが、この手法は従来の分光観測の結果と整合しないことが知られていた。そこで我々はこの手法の系統誤差の要因を精査し、誤差が主星表面の輝度分布の不定性の取り扱いに起因することを明らかにした。 以上の成果は、今後ホットジュピター以外の惑星に対してもスピン軌道角の制限を進め、ホットジュピターの真の特異性を明らかにし、その形成過程に迫る足がかりとなるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来の方法とは相補的な、星震学および重力減光による微弱な光度曲線の変化を用いたスピン軌道角推定法について、具体的な系に応用して興味ある結果を得るとともに、前者の結果を論文にまとめることができた。また上記以外にも、進化した星まわりの惑星系の特徴づけについて、測光データの解析という立場から貢献することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
重力減光を用いた手法についての結果をまとめるとともに、確立した手法を高速自転星まわりの惑星系に適用し、系統的な解析を行う。このような解析により、ホットジュピターとより長周期の木星型惑星のスピン軌道角の比較を行うことで、ホットジュピターで観測される自転軸・公転軸の大きなずれが、ホットジュピターが内側の軌道に移動したことに起因するものであるか否かを明らかにすることができる。
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Research Products
(8 results)