2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J07196
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
蛭田 有希 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 気温 / 生態系サービス / 空間情報指標 / 市街地 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、市街地に存在する樹木や自然的な土地被覆などの生態的な要素の量や分布が、気温に与える影響を把握することにより、市街地の生態系サービスの効果的活用に向けた知見の獲得を目指すものである。具体的には、1)各要素が持つ熱的効果を表す空間情報指標の獲得、2)指標が有効な時間的条件、空間的条件の理解、3)気温を説明しやすい指標が切り替わる要因の理解、を目的とする。 解決すべき課題は、物理現象を積み上げる従来の方法では、植物の生理活動を含む複雑な熱的効果を捉えることが難しいという点である。過去の研究では、樹木を組み込んだ数値計算モデルを精緻化することに力が注がれてきた。しかし、樹木がもたらす熱的効果を考えると、蒸散と関わる気孔の開閉に限定しても8種類以上の要因が影響し、樹木の形状、葉の分布、樹種ごとに異なる生理的特性などを正確に組み込むことは未だ困難だと言える。現状において、こういった複雑な事象から、可能な限り個々の条件に依存しない定量的知見を得るための唯一の方法は、実際の現象を表す特徴量が示すパターンを解釈する統計的手法だと考えられる。しかし、現状では、具体的分析手法のみならず、分析の対象となるデータ自体が不足している。 本研究では、気温と空間情報指標との相関を特徴量として、決定木やSVMといったパターン認識を応用した分析を行った。また、分析に先立ち、東京23区内において、市街地生態系の基盤を成す樹木の量(水平的な分布範囲および高さ)を詳細な解像度で定量化する手法を考案した。また、東京都葛飾区水元地区57地点において、2014年1年間にわたり10分ごとに気温を観測した。結果、説明力の高い指標が時間帯や季節によって切り替わることが確認され、その切り替わりには日射と気温が大きく影響していること、そして、切り替わりの生じる閾値について理解することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データ整備手法の考案や気温データの整備等に想定より時間を要したものの、着実に研究成果が得られているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題として、1)生態的要素の量だけでなく分布状況を示す指標等、多様な指標の検討、2)気温に影響を及ぼしやすい生態的要素の分布範囲の検討、3)指標値の増加の程度と気温の変化の程度との関係性の理解、4)空間構成という面から熱的に脆弱な場所の可視化などが挙げられる。
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Research Products
(1 results)