2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J07204
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三浦 雄城 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 符瑞 / 儒学 / 陰陽五行 / 政治思想 / 社会規範 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は漢から唐を中心とする中国中古時代において、符瑞と呼ばれる吉祥の自然現象が政治や社会にいかなる意義を有していたかを解明するものである。符瑞とは例えば、麒麟・鳳凰などの動物や嘉禾・木連理などの植物、景星・慶雲などの天文気象を指す。 麒麟や鳳凰などの符瑞は、秦漢帝国出現によって中国が統一される以前から、さまざまな思想家によって既に言及されてきた。ところが漢帝国400年のうちに儒教が国教としての地位を確立すると、以後の中国では道教・仏教との相克を続けながらも、儒教が中心的な政治思想・社会規範として定着するに至った。そのため、漢唐間における符瑞の政治的・社会的意義を明らかにするためには、儒教との関連を検討しなければならない。平成26年度はこのうち、漢代における儒教の政治的・社会的浸透と符瑞との関連を中心に検討を行った。以下がその結果である。 符瑞という観点からみた場合、漢帝国400年の儒教浸透の推移は(1)前漢成立から武帝一代(2)武帝死後から前漢滅亡(3)後漢成立以降と分けることができる。(1)における符瑞言及者は陰陽五行家が中心であり、儒家は非常に少ない。その内容も符瑞出現により改正朔・易服色を訴えるもので、「符瑞→人事」と模式化できる。(2)ではこの模式に変化が生じ、皇帝の儒教的政治により符瑞を招来できるという、儒家による人事主導型の言及が見られるようになる。「人事→符瑞」と模式化できる。符瑞による儒教の政治思想が定着を始めた。(3)では後者の模式を皇帝だけでなく地方長官や庶人も受容し、彼らが徳治や孝行で符瑞を到来させる記事が散見されるようになる。社会規範としての儒教が符瑞を媒介に浸透し始めた。 いまだ迷信深い漢代社会において、神秘性をもつ符瑞が人事を尽くすことを説く儒教に取り込まれたことは、儒教の浸透とともに、中国社会の主体性確立に影響を与えた点で大きな意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記の検討結果を得られたことは大きな進展であったが、これを論文投稿や学会報告など公的に発表することができなかったことが悔やまれる。
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Strategy for Future Research Activity |
後漢に続く魏晋南北朝時代は、人間性の解放と理性の時代とされることが多い。そのような時代において、符瑞はどのような変遷をたどったのか。王朝交代の頻繁化という政治的視点と、礼特に喪服礼の重視という社会的観点、儒教経典を解釈する義疏学の流行という思想的観点から考察する。
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