2014 Fiscal Year Annual Research Report
クロロフィル蛍光を用いたシアノバクテリアの代謝系相互作用の定量的解析
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14J07221
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小川 敬子 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | シアノバクテリア / クロロフィル蛍光 / 光合成 / 呼吸 |
Outline of Annual Research Achievements |
真核生物はオルガネラを持ち、呼吸はミトコンドリア、光合成は葉緑体といったように、各代謝系はオルガネラに局在している。それに対し、オルガネラを持たない原核光合成生物のシアノバクテリアでは、一つの細胞内に代謝系が混在しており、それぞれが相互に作用し得る状態にある。殊に、電子伝達鎖の一部を共有している光合成と呼吸の関係は、その典型的な例である。研究代表者は以前に、呼吸系だけが動いている暗所のみならず、光合成系も駆動されている明所下においても、呼吸関連遺伝子の破壊による呼吸の状態変化が、光合成色素であるクロロフィルが放出する蛍光に顕著な影響を与えることを見出し、報告した。一方で、無機炭素を細胞外から取り込む機構に関与する遺伝子の破壊も、明所下においてクロロフィル蛍光に影響を与えることを見出した。これらの結果から、呼吸や無機炭素取込みといった光合成以外の代謝系もクロロフィル蛍光に影響を与えると結論できる。さらに、この知見を利用して、シアノバクテリアにおける呼吸と無機炭素取込み機構の評価方法を考案し、論文発表に至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、主に呼吸系が光合成系に与える影響に焦点を当て、当初計画では、これまで用いてきた呼吸関連遺伝子破壊株の他、別の呼吸経路の遺伝子を破壊した株を作製し、その遺伝子破壊株の解析を行い、二つの呼吸経路の比較を行う予定であった。しかし、無機炭素取込み機構の遺伝子破壊株における解析実験に進展が見られたため、計画を変更し、そちらの解析を進めた。その結果、クロロフィル蛍光測定によるシアノバクテリアの呼吸と無機炭素取込み機構の評価方法の考案につながり、雑誌論文の投稿、採択という形で、研究成果を上げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
シアノバクテリアにおいては光合成と他の代謝系との間の相互作用があることで、クロロフィル蛍光測定により、光合成のみならず他の代謝系の状態が評価できる一方で、光合成の状態を正確に評価できないという問題が生じる。例えば、呼吸関連遺伝子の破壊により呼吸活性が低下したシアノバクテリアでは、酸素発生速度から見積もった光合成活性は野生株よりも低下しているのに対し、クロロフィル蛍光から見積もった光合成活性は野生株を上回る結果となることを、以前に研究代表者は見出している。さらにシアノバクテリアでは、代謝系間の相互作用以外にも、クロロフィル以外の色素、例えば光化学系Ⅱの集光色素複合体であるフィコビリソームなどが放出する蛍光により、クロロフィル蛍光測定による光合成の状態の正確な見積もりができないことがわかっている。これらのような問題は、シアノバクテリアにおいてクロロフィル蛍光測定を行う上で、無視できないものであり、今後の研究を遂行するためには、これらの要因がどのように測定結果に反映されるのかを理解しておく必要がある。よって、代謝系間の相互作用の研究と並行して、クロロフィル蛍光測定においてクロロフィル以外の色素からの蛍光の影響の解析の実験も行った。現在のところ、クロロフィル蛍光測定の際に呼吸の影響を緩和するような光を照射することにより、クロロフィル以外の色素からの蛍光の影響を排除できることを見出している。今後、フィコビリソーム量が大きく減少する窒素欠乏環境下において、上記のようなクロロフィル蛍光測定の手法が光合成の状態の評価に有効であるかを調べていく方針である。
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Research Products
(3 results)