2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J07277
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉井 祐弥 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | らせん構造 / プロトン移動 / 水素結合 / 次元性制御 / 酒石酸 / アニリン / イオン性結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
導電性や強誘電性などの機能性を有し、分子の自己組織化により作製可能な「イオン性らせんファイバー」の実現とらせん構造を誘起の考察および機能性の評価を研究目標とした。これまでの研究より、分子間プロトン移動型のイオン性化合物を用いたらせん構造の誘起には、分子への不斉点導入とカチオン-アニオンの配列規則が重要であることを見出してきた。特にアルキル鎖を排除したアニリニウム-酒石酸系において、らせん体を誘起するにはカチオンとアニオン鎖間の配列様式の制御が重要であり、i) 静電反発により分子間隔を広げる手法、ii) 嵩高い置換基の導入により配列間隔を制御する二つのアプローチが有効であることを明らかにした。 先のらせんナノファイバーは、ハロアニリンと酒石酸から成る分子間プロトン移動型の有機塩から形成した。この様な有機結晶において、ハロアニリニウム誘導体とアニオン設計から、無加湿条件下で高いプロトン伝導性を有する分子性有機塩の開発に成功した。一連のハロアニリンとリン酸の組み合わせから13種類の分子性結晶を作製し、その構造-物性相関からプロトン伝導性の設計に至る研究を進行している。ハロアニリニウムの適切な選択により水素結合ネットワークの次元性と連結度の精密制御によるプロトン伝導度の評価を試みた。リン酸アニオンから成る水素結合ネットワークの次元性は段階的に制御が可能であり、次元性と伝導性に相関が確認された。o-ハロアニリニウムからなる有機塩では、アニオンの一次元水素結合鎖が見られ、他の二次元水素結合ネットワークの系と比較して高い伝導度を示し、高い伝導性の発現に一次元鎖が優位であることを示唆する結果が得られた。現在、カチオンであるオルトハロアニリニウムに不斉点を導入することで、カチオン由来のらせん構造の誘起を目的として研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究初年度では、らせん構造が確認されたカチオン分子であるハロアニリニウム誘導体と酒石酸から成る有機塩を出発点とした水素結合性分子結晶の開発を試みている。一連の物質開発から、カウンターアニオンである酒石酸をリン酸に変えることで、高プロトン伝導性の分子性結晶の開発に成功した。置換基の種類と位置が異なるハロアニリン誘導体を検討する事で、10-3 Scm-1に達するプロトン伝導性を有する結晶を開発した。伝導性を示す化合物は、いずれも一次元水素結合構造を有し、その結合様式の次元性とプロトン数に応じて伝導性が大きく変化することを明らかとした。現在カチオンへの不斉点導入により、プロトン伝導性を有するらせんナノファイバーの開発を試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在アニリニウムカチオンへの不斉点導入を行ったo-ハロアニリニウム誘導体をイオン性一次元構造体へ組み込み、らせん構造誘起の条件抽出を行うことで、プロトン伝導性を有するらせんナノファイバーの開発を試みる。また、作製したプロトン伝導性有するらせんナノファイバーについてはPCI-AFMを用いてファイバー一本の伝導性測定を実施予定している。また、ファイバーのPXRD測定より得られたパウダーパターンを用いて分子配列について検討を行い、プロトン伝導の経路探索を行っていく予定である。
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Research Products
(5 results)