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2014 Fiscal Year Annual Research Report

グルタミン酸とノルアドレナリンの協調的作用によるグリア細胞の脳血管制御機構の解明

Research Project

Project/Area Number 14J07414
Research InstitutionKeio University

Principal Investigator

篠塚 崇徳  慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)

Project Period (FY) 2014-04-25 – 2016-03-31
Keywordsノルアドレナリン / グルタミン酸 / アストロサイト
Outline of Annual Research Achievements

脳を構成するグリア細胞の中で最も主要なアストロサイトは、神経活動と脳血流の変化の橋渡しをする役割を担っていると考えられている。本研究は脳血流の変化に影響する神経伝達物質であるグルタミン酸とノルアドレナリンが、アストロサイトの生理学的な応答に対して協調的に働くことで脳血管を制御するのではないかという仮説を検証する。
本年度は、マウス急性脳スライスでの2光子顕微鏡イメージング法によって、グルタミン酸とノルアドレナリンによるアストロサイトの細胞内カルシウム動態への影響について検討した。まず、ノルアドレナリン存在下または非存在下の条件でグルタミン酸を脳組織内の局所において放出し、それによって生じるアストロサイトの細胞内カルシウム動態の変化について調べた。その結果、ノルアドレナリン存在下でグルタミン酸によって生じるアストロサイト細胞内でのカルシウム濃度の上昇は有意に減弱した。次に、ノルアドレナリン受容体のサブタイプごとの減弱作用に対する影響を調べた。アストロサイトに発現するノルアドレナリン受容体のうち、α1受容体とβ受容体の2つの受容体サブタイプに関して細胞内カルシウム動態との関係性が示唆されている。そこで、これら2つのサブタイプに対する特異的な刺激薬を用いた検討を行った。その結果、α1受容体刺激薬存在下では、ノルアドレナリン存在下のときと同様に、グルタミン酸によって生じるアストロサイト細胞内でのカルシウム上昇は減弱した。その一方で、β1受容体刺激薬の存在下では逆に、グルタミン酸によって生じるアストロサイト細胞内のカルシウム濃度の上昇が一過性に増強された。以上から、ノルアドレナリン存在下でのグルタミン酸による刺激に対するアストロサイト細胞内カルシウム濃度の上昇が減弱するときの機序として、ノルアドレナリンα1受容体が関与していることが示唆された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

2光子顕微鏡を用いた急性脳スライス中でのアストロサイトの細胞内カルシウムイメージングによって、ノルアドレナリン存在下でグルタミン酸への応答が減弱するという作用を明らかにした。この知見は、グルタミン酸とノルアドレナリンがアストロサイトの生理学的な変化に対して協調的に作用している可能性を示している。これまでに同じような知見として、分散培養アストロサイトを用いた報告があるが、脳組織内での神経細胞や脳血管との相互作用が維持された条件での知見としては初めてのものである。さらに、アストロサイトに発現するノルアドレナリン受容体のサブタイプによって影響に違いがあることを見出した。α1受容体の刺激薬存在下ではノルアドレナリンと同様にグルタミン酸への応答は減弱する。その一方で、β受容体の刺激薬存在下では逆に、グルタミン酸への応答は増強された。以上の結果はノルアドレナリンとグルタミン酸はアストロサイトに対して複雑な協調関係を有していることを示唆している。これらは本研究の鍵となる知見であると考えられ、次年度以降の解析の方針を与えるものとなった。
一方で、血管径の評価は行ったものの十分な成果は上げられなかった。この理由として、アストロサイトの細胞内カルシウム濃度の変化が生じてから血管径の変化が生じるまでに数秒の時間差があることに加え、血管の収縮・拡張反応が数分程度持続することがあげられる。グルタミン酸とノルアドレナリンによるアストロサイトの細胞内カルシウム濃度の変化に対する減弱作用が生じる時間枠が短いため、アストロサイトの細胞内カルシウム濃度の変化と血管径の変化の因果関係を明確にすることが困難であった。さらに、血管調節因子として代表的なプロスタグランジンE2をELISA法で定量的に測定し、グルタミン酸とノルアドレナリンの協調的な減弱作用を捉えようと試みたが、有意な差は見られなかった。

Strategy for Future Research Activity

これまでの研究では、急性脳スライスを用いてアストロサイトと脳血管の生理学的な解析を行ってきた。しかしながら、急性脳スライスを用いた実験系は脳実質内の神経細胞やグリア細胞、脳血管の構造を維持しており、かつ、薬理学的な検討が容易であるという優れた利点を有しているものの、血流がないことを始めとしたいくつかの点でin vivoと生理学的に異なっており、脳血管の反応を含めた実際の生体内での反応を十分に調べられているかについて疑問が残る。
そこで今後は、これまでに急性脳スライスの実験系で得られた知見を基にして、in vivoでの2光子顕微鏡イメージングをもちいた検討によって検証する予定である。さらに、これまではアストロサイトと脳血管について注目してきたが、両者の反応の間の時間差、及び血管の応答の時間枠が数分間持続することでアストロサイトの応答による影響を十分に評価できていないと考えられる。これに加えて、最新の知見では、アストロサイトの細胞内カルシウムの変化と、血管の収縮・拡張反応の間の因果関係に疑問が投げかけられている。そこで、新たな展開として、これまでに得られているグルタミン酸とノルアドレナリンによるアストロサイトへの協調的な作用と脳血流の関係性とともに、神経活動との関係性についても視野に入れて研究を進める予定である。

  • Research Products

    (2 results)

All 2014

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] Sustained Downregulation of β-Dystroglycan and Associated Dysfunctions of Astrocytic Endfeet in Epileptic Cerebral Cortex.2014

    • Author(s)
      Gondo A, Shinotsuka T, Morita A, Abe Y, Yasui M, and Nuriya M.
    • Journal Title

      The Journal of Biological Chemistry

      Volume: 289 Pages: 30279-30288

    • DOI

      10.1074/jbc.M114.588384

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] てんかん条件下におけるアストロサイト足突起のバリア機能の低下2014

    • Author(s)
      篠塚 崇徳, 権藤 麻子, 森田 彩加, 阿部 陽一郎, 安井 正人, 塗谷 睦生
    • Organizer
      第131回日本薬理学会関東部会
    • Place of Presentation
      横浜
    • Year and Date
      2014-10-11

URL: 

Published: 2016-06-01  

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