2015 Fiscal Year Annual Research Report
植物の個体レベルのC・N分配調節メカニズムに関する生理生態学的研究
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14J07443
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉浦 大輔 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 光合成 / ダウンレギュレーション / ルビスコ / 細胞壁 / 葉肉コンダクタンス |
Outline of Annual Research Achievements |
高CO2条件下で生育した植物では、しばしば光合成速度が低下する現象が観察される。この原因は、葉に蓄積した非構造性炭水化物 (TNC、デンプンや可溶性糖) が引き起こす光合成タンパク質の減少や、デンプン粒による葉緑体内のCO2拡散の阻害であると指摘されている。しかし、我々の先行研究からは、TNCの蓄積に応じて細胞壁量や厚さが増加することも示唆されており、どの要素の影響が大きいのかは不明である。 そこで本研究では、シロイヌナズナの野生型および葉に蓄積するTNCが過剰または過小な糖代謝変異体の系統を材料とし、高CO2条件下で起こる光合成低下に対する、各要素の影響を調べた。高CO2または低CO2、N富栄養または貧栄養条件下で栽培したときの、個葉の光合成特性 (光合成速度、葉肉コンダクタンス、ルビスコ量など) と、形態的特性 (解剖学的特性、細胞壁厚さなど) を解析した。 全ての系統において、TNC、細胞壁量、細胞壁厚さは、高CO2条件ほど高くなる傾向を示した。しかし、これらの特性と最大光合成速度やルビスコ量の間には明確な関係はみとめられなかった。その一方で、葉肉コンダクタンスは高CO2条件ほど低下する傾向が見られ、野生型と光合成速度の高い変異体において、葉肉コンダクタンスは細胞壁厚さと負の相関を示した。これらの結果から、シロイヌナズナにおいて、過剰に蓄積したTNCは高CO2条件でも光合成速度の低下を引き起こさないが、高CO2条件における細胞壁量や厚さの増加は葉肉コンダクタンスの低下を引き起こすことで、光合成速度の低下に寄与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シロイヌナズナの野生型と変異型を用いた光合成ダウンレギュレーション研究を展開し、前年度までに得られた結果の一般性を確認することができた。また、高CO2条件では非構造性炭水化物が蓄積するだけでなく、細胞壁などの構造性炭水化物の量も増加し、葉肉コンダクタンスの低下に寄与している可能性を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
様々な植物における細胞壁量・厚さの環境応答と、葉肉コンダクタンスの関係を調べていく。
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Research Products
(2 results)