2014 Fiscal Year Annual Research Report
成長期の銀河団銀河の内部構造から探る楕円銀河の成り立ち
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14J07659
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
林 将央 国立天文台, 光赤外研究部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 銀河団 / 楕円銀河 / 銀河形成 / 銀河進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
すばるディープフィールドに存在するz~1.47と1.62の118個の[OII]輝線銀河に対して、星形成領域の星間電離ガスの物理状態を調べた。すばる望遠鏡のFMOSを用いて取得した近赤外線スペクトルから、静止系可視領域の主要な輝線(Hβ,[OIII],Hα,[NII],[SII])を検出し、その輝線の光度および強度比から、イオン化パラメーターを明らかにしている。本研究の興味深い点は、z~1.5の典型的な星形成銀河が強い[OIII]輝線を放射していることを明らかにしたことである。大部分の銀河では、[OIII]輝線は[OII]輝線よりも強い。また、星質量が大きくなるにつれて、[OIII]/[OII]が小さくなるという相関関係が得られた。したがって、z~1.5の星形成銀河は、近傍銀河と比べて高いイオン化パラメーターを持ち、かつ、小質量銀河ほどより高いイオン化パラメーターを持つことが明らかになった。高いイオン化パラメーターをもつ要因として、輻射場の違いの可能性が大きいと考えられる。つまり、遠方の小質量銀河ほど、星形成活動が活発で、O型星などの寿命が短い大質量星が輻射場に大きな影響を与えていることが示唆される。 もう一つの研究として、z=2.53の電波銀河の周りの原始銀河団に対して、ハッブル宇宙望遠鏡のACSおよびWFC3カメラを用いて、2014年7月から8月にかけて地球10周分の観測を行った。ハッブル宇宙望遠鏡のデータの強みは、地球大気のゆらぎの影響を受けないことによる空間解像度の高さである。原始銀河団に存在する星形成銀河の形態を調べたところ、約40%の銀河がクランプ状の形態をしていることが明らかになった。一方で、星形成をすでに止めた銀河のほとんどは、1成分のプロファイルで表すことができる比較的単純な形態をしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度の研究実施計画では、3つの研究を実施することを計画していた。一つ目がすばるディープフィールドに存在するz~1.5の星形成銀河の近赤外線分光観測、2つ目がアルマ望遠鏡を用いたz=1.46の銀河団に存在する銀河のダスト放射の観測、3つ目がハッブル宇宙望遠鏡を用いたz=2.53の原始銀河団に存在する銀河の撮像観測である。 1つ目の研究においては、結果を論文にまとめ投稿した。平成27年4月20日付けで日本天文学会欧文研究報告(PASJ)に掲載されることが決定した。3つ目のハッブル宇宙望遠鏡の観測は、平成26年の夏に実施され、現在のところデータの整約を終えて詳細な解析を行っており、成果が出始めている。しかし、2つ目のアルマ望遠鏡の観測はまだ実施されておらず、観測データが届くのを待っている状態である。 このような状況を踏まえて、本研究課題はやや遅れているとの評価である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、z=2.53の原始銀河団に存在する銀河に対して、ハッブル宇宙望遠鏡の撮像データを用いた研究を進め、その成果を論文にまとめて出版することを目指す。平成26年度の研究で、約40%の銀河がクランプ状の形態をしていることが明らかになった。一方で、星形成をすでに止めた銀河のほとんどは、1成分のプロファイルで表すことができる比較的単純な形態をしていた。しかし、銀河同士の合体の寄与や銀河のサイズを議論するためには、より定量的な方法で銀河の形態を調べる必要がある。ハッブル宇宙望遠鏡の高解像度のデータを用いて、銀河団銀河の形態の成長過程やサイズの進化について議論を行う計画である。 つぎに、平成27年度の前半には、アルマ望遠鏡によるz=1.46の銀河団銀河のダスト放射観測が行われる予定である。この観測から、ダストに隠された星形成の分布が明らかになることが期待できる。ハッブル宇宙望遠鏡で撮られた既存の静止系紫外線の撮像データとアルマ望遠鏡のデータと合わせることで、z=1.46の銀河団銀河の内部における星形成の分布が詳細に議論できるようになる。 どちらの研究でも将来楕円銀河になる可能性の高い銀河を調べているので、これらの研究を通して、楕円銀河の成り立ちを探る計画である。
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