2014 Fiscal Year Annual Research Report
マクロ的視点を活用した西洋思想の受容に関する解析的研究近代台湾の事例を中心として
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14J07717
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
陳 熙 東北大学, 国際文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 中国近代思想史 / 中国知識人 / 台湾外省人 / 殷海光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は台湾外省知識人を研究対象とし、近代台湾の西洋思想の受容における外省知識人の思想的営為を究明することを目的とする。今年は、以下の二つの方針のもとに研究を推進した。 第一は研究の基礎を築くため、関連資料の収集に努めた。資料収集は以下の三つの成果をあげた。(1)日本国内外の先行研究を整理し、問題点を確認できた。(2)終戦直後の外省知識人の思想状況を把握するために、来台した外省人の旅行記、日記、書簡、文章などを特に彼らの台湾認識の異同に留意して整理することができた。 (3)日本国内で入手困難な外省人の著作を購入できた。 第二は研究対象の一つである殷海光の著作を精読し、殷海光思想における一貫性を中心に研究を行った。殷海光の特徴として、彼の生涯において、大きな思想的「転向」が見られた人物である点があげられよう。先行研究を整理した結果は、いままで多くの研究でその思想的「転向」ばかりが注目されているが、彼の思想における一貫性を有する部分についての論考は、ほとんど見当たらない。そのため、申請者は殷海光における知識人論と大衆論に対する分析を通じ、エリート主義の傾向が一貫的に見られることを確認した。結論から言えば、殷海光が自分のことをモデルとし、自らの学力と道徳観への自負の上に理想的な知識人像を築いた。さらに、彼は非理性的な大衆の感情に迎合すると、判断力を失うおそれがあり、知識人は自らの使命を達成するために、民衆に対決する覚悟を持つべきだと主張し、知的な高潔さによって民衆から距離を取る必要性を力説した。こうしたエリート主義は彼の思想における根源であるといえる。 現在、上記の作業から取得した研究成果を整理しつつ、論文作成と発表の準備を次年度以降の課題として進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初に計画したとおり、関連資料の収集・調査・整理をある程度達成し、次年度以降の研究の基盤を築くことができたため。また、集めてきた文献資料の一部を分析することができ、先行研究における十分に検討されてこなかった殷海光のエリート主義傾向について新たな理解を見出すことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、「殷海光の大衆論・知識人論」というテーマで2015年の6月に日本比較文化学会全国大会にて報告する予定であり(申し込み済)、公表論文の執筆にも取り組む。また、殷海光についてより深く研究し、彼の思想と「新文化運動」期に出現した様々な思潮との関係を検討し、殷海光を中国近代思想史のなかでどう位置づけるべきかを検討する。さらに、研究の視野を拡大し、研究史を整理するプロセスで、申請者の研究にとって研究価値を有する外省人作家・陳之藩を発見したため、来年度以後に新しい研究対象として考察する。
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