2015 Fiscal Year Annual Research Report
マクロ的視点を活用した西洋思想の受容に関する解析的研究近代台湾の事例を中心として
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14J07717
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
陳 熙 東北大学, 国際文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 外省知識人 / 進化論 / 知識人論 / 殷海光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度の研究成果を発展させ、学会発表1回を行い、論文2本を発表した。 論文1.「殷海光思想における進化論について」(『比較文化研究』、121期)では、殷海光思想の一貫性について、進化論という側面から分析した。各時期の殷海光の言論を分析した結果、彼が進化論的アプローチを用いて、文化・科学・社会の発展を捉えていたことを明らかにした。論文2.「殷海光の知識人論について」(『国際文化研究』、第22号)では、殷海光の知識人論を形成させた要因を確定した。 また、本年度は「新文化運動」以来から継続的に論じられる「伝統と現代」という課題に対して外省知識人がどのように理解したかを考察の中心として進めた。考察の結果、殷海光と徐復観はいずれも、儒家道徳にもとづいて伝統文化を捉え、そして伝統文化を低次元(庶民)文化と高次元(エリート)文化に分けて論じていたが、両者の見解は大きな差異が存在したことを確認した。 殷海光の道徳観は表面から見れば理論的空論というようなものであるが、実は自らの経験的認識を超えて探求したものではない。彼は自分の道徳観により理想文化(すなわち現代)を構築し、そしてその理想文化を尺度として使い、伝統文化に対する考察を実施した。一方、徐復観は「心性論」より成立した道徳観を儒家思想ないし中国文化の核心と見なした。彼は儒家道徳が歴代知識人によって意図的に解釈されていたので、本来の「心性論」から逸脱したと指摘した。こうした考えを踏まえ、徐復観は「無為」により実践的・素朴的な伝統道徳の本来のありかたに戻すべきだと主張していた。 現在、上記の検討をまとめる論文を作成中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は学会報告や論文発表の機会を得たことにより、昨年度の研究作業の成果を示すことができた。2本の論文は断片的であった従来の殷海光研究の問題点を克服し、マクロ的視点から殷海光の「進化論思想」と「知識人論」を捉えることで、殷海光の思想を中国近代思想史にいかに位置づけるかを検討した。また、昨年度の研究に引き続き、新儒家を視野に入れ、異なる知識人グループの比較を通して、終戦直後の外省知識人の思想状況をより全面的に把握することを目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は1970年代と1980年代に活躍した知識人を考察対象とし、文化相対主義・ポストモダニズムなど欧米学界を動かした新理論、新思潮が当時の外省知識人にどのような影響を与え、またその影響によって彼らの思想がどのように転向したのか、その転向にどのような意味があったかを確認したい。こうした考察にもとづいて第一世代と第二世代の外省知識人との比較研究を行うつもりである。
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Research Products
(3 results)