2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J07786
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
吉元 加奈美 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 近世大坂 / 茶屋 / 遊郭 / 遊所 / 遊所統制 / 堀江新地 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は遊廓・遊所に対する統制の枠組みを踏まえ、近世大坂の遊廓社会を総体的に把握することを目指し、1遊女商売を「黙認」された茶屋が展開する遊所の実態を検討すること、2大坂唯一の公認遊廓である新町の史料を探索・収集すること、の二点を重点的に進めた。 1については、代表的な「黙認」遊所(=茶屋赦免地)である堀江新地に位置する、御池通五丁目・同六丁目について、『小林家文書』(大阪市立中央図書館所蔵)に残された史料を素材に分析を進めた。個別町に残る水帳や人別帳、また町内の事件や事故に関する一件史料を検討したことで、両町の空間構造の総体的な分析を通して両町に跨る茶屋密集区域(=“茶屋町”)を確認し、その上で“茶屋町”における茶屋営業の実態と遊所としてのネットワークを考察することができた。併せて、“茶屋町”がもつ遊所としての普遍性と、堀江新地に位置することによって規定される固有性を整理した。以上の成果は2014年10月に口頭報告(「近世大坂における茶屋の考察―堀江地域を中心に―」、部落問題研究所歴史部会・遊廓社会研究会共催企画)を行い、それを基に論文を発表した(「近世大坂における茶屋の考察―堀江地域を素材に―」、『部落問題研究』第211号、2015年4月刊行予定)。 2については、史料の限定性もあり充分に検討されてこなかった、新町内部の社会構造に迫りうる史料の探索・収集を行った。既に確認していた九軒町の三ヶ条証文に加え、佐渡屋町の人別帳(大阪府立中之島図書館所蔵)を確認した。また『澪標』(遊廓案内)や『つましるし』(遊女評判記)からも遊女屋・揚屋・茶屋の展開を分析しうると考え、比較・検討を行うために出版年の異なる版本を収集した。 また、上記の二点以外にも、京都をはじめとして、比較・検討を行い得る史料の探索・収集も行った(明治大学博物館所蔵『京北野新地文書』)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、遊所統制の法的枠組みを踏まえて大坂の遊廓社会を総体的に把握することを目指して、(Ⅰ)『小林家文書』を素材として大坂の「黙認」遊所の実態を分析すること、(Ⅱ)大坂唯一の公認遊廓である新町の史料を探索・収集することを課題とした。 (Ⅰ)については、『小林家文書』を分析し、堀江新地に位置する御池通五丁目・六丁目を素材に「黙認」遊所の実態を考察し、口頭発表と論文発表を行うことができた。ここでは、開発当初の様子が窺える宝永三(1706)年以降19世紀半ばまでの水帳を分析し、両町の展開を整理した。それを踏まえて、両町の社会=空間構造を総体的に把握するための検討を現在進めている。また、大坂の遊所のもつネットワークも検討し、それが京都にも及ぶことを明らかにした。そのことから、大坂の遊廓・遊所の理解を深めるためには京都の分析が不可欠であると認識し、今後の研究にむけた分析視角を得ることができた。 (Ⅱ)については、史料の探索を進め、現在までに確認できたものについては、大方収集することができた。今後、史料の検討を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の三点を重点的に行う。まず1本年度の成果を踏まえて、『小林家文書』をさらに検討し、御池通五丁目・同六丁目の社会構造全体の考察や天保改革との検討の分析を深める。また、2新町遊廓について分析するとともに、堀江新地以外の「黙認」遊所の検討を進める。並行して、3京都の遊廓社会を検討しうる史料の探索・収集を引き続き行う。 1水帳の分析を通して、両町の開発当初のあり様と以後の展開を整理することができた。その上で、人別帳や金銭引戻し出入りなどから窺える町内に生きる人びとのあり様を、借屋人に注目して分析することで、御池通五丁目・同六丁目の社会=空間構造の総体的把握を目指す。これについては投稿論文として執筆を進めている。また、新町遊廓以外での遊女商売の禁止が徹底された天保改革において、茶屋の撤廃が命じられた両町を素材とすることで、茶屋営業の禁止が命じられた地域と、廃業か変宅を余儀なくされた茶屋営業者の流入先となった新町・三ヶ所の双方における、天保改革の遊廓・遊所統制が与えた影響を明らかにする。 2新町遊廓内部の社会構造に迫るべく、現在までに収集した史料の分析を本格的に開始する。また「黙認」遊所の考察を深めるために、茶屋の奉公契約において請人・口入として連印する人物の分析を通して、“茶屋町”のもつネットワークを明らかにしたことを踏まえて、堀江新地以外の「黙認」遊所に残された奉公人請状を検討する。具体的には、道頓堀の元伏見坂町で茶屋を経営していた伏見屋善兵衛家の文書(大阪市立大学学術情報センター所蔵)を中心に分析を進める。その際には、それぞれの遊所がもつ普遍性と固有性に注目しながら考察を進める。 3大坂の分析から得られた研究手法を用い、京都の遊廓社会についても分析するために史料の探索・収集を進めている。今後も、京都府立総合資料館所蔵の『祇園内八町文書』をはじめ史料調査を行う。
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Research Products
(2 results)