2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14J07812
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西嶋 傑 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 腸内細菌叢 / マイクロバイオーム / メタゲノム解析 / 次世代シークエンサー / バイオインフォマティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
私はこの1年間の研究において、前年度までの研究を発展させ、日本人と外国人の腸内細菌叢のメタゲノムデータの比較解析をさらに大規模に行った(前年度: 3カ国・約200人、今年度: 9カ国・約1000人)。 まず、日本人被験者の糞便サンプルのさらなるシークエンスを行った。新たな日本人被験者55人から得られた糞便サンプルに対し、次世代シークエンサーである454、Ion PGM/Proton、MiSeqを用いてメタゲノム解析を行い、前年度のデータと合わせ約350Gbの配列データを得た。これらのデータから約490万の遺伝子配列を同定し、日本人の腸内細菌叢が所持している遺伝子のカタログを作成した。これら日本人のデータと、外国人データ(8カ国約900人)を情報学的に比較解析した結果、被験者の国により腸内細菌叢が大きく異なること、また、その各国の特徴は食事よりも抗生物質と強い関連があることを明らかにした。今後はマウスを用いて、上記の腸内細菌叢と抗生物質の関連を調べる予定である。 以上の研究実施状況は、私が前年度まで行っていた解析をより大規模に発展させたものである。その大規模な比較解析により、前年度までの小規模な解析では見なかった「日本人を含む各国に特徴的な腸内細菌叢の発見」につながり、さらに予想外な結果として「その特異性が抗生物質と相関していること」、を明らかにすることができた。これらの結果は、日本人腸内細菌叢の基礎データとして、今後の研究に大きく役立つことが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究目的と比較し、本研究はおおむね順調に進展している。昨年度は以前までの比較解析をより大規模に行い、その結果として、より詳細に日本人腸内細菌叢の特徴解明を行うことができた。 具体的には、新たな日本人被験者55名の糞便のメタゲノム解析を次世代シークエンサーである454、Ion PGM/Proton MiSeqを用いて行った。これにより、日本人のデータとして約350ギガの配列データが得られ、それらの配列から日本人の腸内細菌が所持する遺伝子をより多く同定することができた。この遺伝子はトータルで約490万遺伝子であり、日本人の腸内細菌叢が所持している大部分の遺伝子を含んでいると推定される。この遺伝子カタログを使用することにより、後の解析がより詳細に行えるようになった。次いで、それらの日本人データとの比較として、新たに6カ国の被験者のメタゲノムデータを解析に加え、比較解析を行った。これらの被験者の大規模な情報解析により、日本人を含めた各国の腸内細菌叢の特徴、また、その特徴と関連する因子を明らかにすることができた。とくに日本人の腸内細菌叢の特徴として、1)極めて高いBifidobacteriumとBlautiaの組成比、2)それと関連した豊富な炭水化物代謝系、3)古細菌Methanobrevibacterの欠如が明らかとなった。 以上のように、昨年度は新しい知見が複数得られており、日本人の腸内細菌叢の特徴解明を目指す本研究は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
私は各国の腸内細菌叢の大規模比較解析により、その国の腸内細菌叢構造に強く関連する因子として抗生物質を同定した。そこで、私は抗生物質が腸内細菌叢に与える影響をより詳細に明らかにするため、マウスを用いて検証することを計画している。 具体的には、無菌マウスにヒトの糞便を投与し、ヒトの腸内細菌叢を所持したノトバイオートマウスを作成する(慶応大学本田研究室との共同研究)。次いで、そのマウスにいくつかの異なる抗生物質を投与する。そのマウスの糞便からDNAを抽出し、次世代シークエンサーで配列を決定する。この配列の菌種帰属をデータベースを用いてアノテーションし、腸内細菌叢の菌種組成を明らかにする。この菌種組成を抗生物質を与えていないマウスと比較することで、抗生物質がどのような菌種または遺伝子に影響を与えるかを明らかにする。ここで調べる抗生物質は、現在世界での使用量の多い、βラクタム系、マクロライド系、キノロン系、テトラサイクリン系を計画している。私が発見した各国のメタゲノムデータと疫学データの関連が正しいとすれば、とくに腸内でBacteroides属の細菌が増加するはずである。また、本研究で得られた成果については、国際科学誌で発表するほか、国内外の学会で発表を行う予定である。
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[Presentation] Metagenomics of the Japanese gut microbiomes2014
Author(s)
Suguru Nishijima, Seok-Won Kim, Kenshiro Oshima, Wataru Suda, Hidetoshi Morita and Masahira Hattori
Organizer
Structure, Function and Dynamics in Microbial Communities
Place of Presentation
Cambridge (United Kingdom)
Year and Date
2014-10-30 – 2014-10-31
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[Presentation] Metagenomics of the Japanese gut microbiomes2014
Author(s)
Suguru Nishijima, Seok-Won Kim, Kenshiro Oshima, Wataru Suda, Hidetoshi Morita and Masahira Hattori
Organizer
PhD Summer School: Methods for Mathematical and Empirical Analysis of Microbial Communities
Place of Presentation
Cambridge (United Kingdom)
Year and Date
2014-10-27 – 2014-10-29
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