2014 Fiscal Year Annual Research Report
1分子・多分子計測の相互理解から展開する新しいナノバイオサイエンス
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14J07839
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松下 祐福 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | X線1分子追跡法 / 過飽和溶液 / MHC |
Outline of Annual Research Achievements |
現在まで、免疫系複合体タンパク質MHCの動態計測研究として2013年度の実験でMHCへ取り込まれた長さの異なるpepであるp52-61(10残基),p48-61(14残基)にラベルされた金ナノ結晶とフルオレセイン(蛍光体)それぞれのダイナミクスを X線1分子追跡法(Diffracted X-ray Tracking; DXT)と蛍光寿命法(蛍光異方性測定)を用いて計測した。2014年度はこれらのデータ解析を主に行い、論文投稿へのデータ整理を行った。本研究はBiophysical Journal 108, 2, 350-359 (2015)に掲載された。 一方、共存型DXTでは主に過飽和溶液(無機、タンパク質材料系)を対象に計測し、この結果より、無機材料の酢酸ナトリウム過飽和溶液(6.4 M)中に共存した金ナノ結晶の動態には少なくとも2つの異なる運動モードが存在することが明らかになった。本結果は単に局所的な粘性差を反映しているのではなく、コントロール実験(層分離実験や金ナノ結晶の共存確認実験)などの結果より、高粘性部分(溶質の集合体)による異方的な極めて微小な圧力が生じていることがわかった。 また、タンパク質系材料では主にHen egg white lysozymeを対象に測定したところ、結晶化準安定状態における溶液状態には無機材料系のそれと同様な異なる運動モードを確認することにも成功した。またその値は無機材料系よりも10倍程度低い値であった。 このような新規パラメータの算出は現在まで未知であった過飽和溶液が安定に維持される特性や結晶化の前段階である核形成プロセスの詳細な理解に繋がる可能性があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度の目標としてはX線1分子追跡法(Diffracted X-ray Tracking; DXT)を用い、特異的な溶液挙動を計測するものであった。特に過飽和溶液を対象とした新規パラメータの算出を行うことに成功した。もちろんこれらの実験手法は水や高分子などの過冷却構造や、固液相変化現象における潜熱機構の局所構造に関する知見取得など、様々な系に適用できると考えられる。本研究の拡張性は極めて高いものであると推測される。一方、DXTで用いられる金ナノ結晶プローブの形状、表面状態などの議論に関しては現在までできていない。またDXTで観測される回転運動のみならず並進運動の議論を行う必要があると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は上述したX線1分子追跡法(Diffracted X-ray Tracking; DXT)で用いられる金ナノ結晶プローブの改変を行い、それぞれの影響について考察を深めていきたい。さらに、DXTでは観測できない並進運動の観測を可能とする暗視野顕微鏡を用いることで、プローブ群の回転、並進運動の局所的な振る舞いについて研究していきたい。 また2年目の目標ではX線小角散乱(SAXS), 蛍光寿命法(蛍光異方性測定)DLSなどの多分子計測系との複合的な研究を行うことで、1分子計測系と他分子計測系における隔たりや相互計測系における相関関係などについて深めることで従来手法における新規パラメータ設定に関する研究を推し進めていきたい。
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Research Products
(10 results)