2014 Fiscal Year Annual Research Report
スピン軌道相互作用と電子間相互作用がもたらす新奇量子現象の理論的研究
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14J07848
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
関根 聡彦 東北大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | スピン軌道相互作用 / 電子相関 / トポロジカル相 / 反強磁性絶縁相 |
Outline of Annual Research Achievements |
スピン軌道相互作用と電子相関はそれぞれ凝縮系において重要な役割を果たしていることが知られている。本研究課題の目的は、スピン軌道相互作用と電子相関がともに強い電子系において新奇な相や現象を見いだすことである。我々はこれまでの研究で、青木相(格子量子色力学における対称性の破れた相)の類似相が凝縮系においても存在しうることを初めて指摘した。本年度は、この青木相が他の電子系においても存在するかを明らかにし、さらに青木相の物性を明らかにすることを目的とし研究を行った。 理論模型として、ダイヤモンド格子上の強束縛模型にスピン軌道相互作用そして同一サイト上(強さU)および最近接格子間(強さV)の電子間相互作用を加えた模型を考えた。まず、相互作用項に平均場近似を行い、U-V平面上での基底状態相図を得た。これにより、Uの大きい領域で反強磁性絶縁相が、Vが大きい領域で電荷秩序が現れることが分かった。続いて、反強磁性絶縁相のFermi準位近傍での有効模型を導出した結果、この相も青木相と見なせることが分かった。このことは、青木相がスピン軌道相互作用と電子間相互作用のともに強い系において一般的に発現し得ることを示唆している。さらに、反強磁性相の有効模型に藤川の手法という場の理論的手法を適用することで、反強磁性相の外部電磁場に対する応答がシータ項というトポロジカルな項によって記述されることを見いだした。シータ項の存在は、電気磁気効果が発現することを意味する。すなわち、凝縮系における青木相はトポロジカル電気磁気効果によって特徴付けられることを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
スピン軌道相互作用および電子相関を有するダイアモンド格子上の強束縛模型における反強磁性絶縁相が青木相と見なせることが明らかとなった。反強磁性相は凝縮系において広く存在する相であるため、本年度の成果は、格子量子色力学における相が凝縮系においても普遍的に存在しうることを示唆している。また、この反強磁性絶縁相のトポロジカル電気磁気効果の係数が、電子間相互作用の強さおよび反強磁性秩序変数の関数として解析的に得られたことの意義は大きいと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、パイロクロア格子を持つイリジウム酸化物などの現実的な系において青木相が発現するかを明らかにしていく予定である。また、トポロジカル相における電子相関効果についても研究を行う予定である。
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Research Products
(11 results)