2015 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエの産卵行動を誘導するコマンドニューロンの同定と機能解析
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14J07885
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
原 佑介 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | ショウジョウバエ / 電気生理学 / インスリン / 休眠 / 産卵 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は脳間部に存在するInsulin-like peptide producing cells (IPCs)の生理解析を行った。最近の当研究室の研究により、ショウジョウバエの雌は低温、短日、饑餓条件で卵巣休眠をし、産卵行動が抑制されることが明らかとなった。また、この休眠と産卵の調節にはIPCsが働くことが明らかにされた。IPCsは体内グルコース濃度を感知し、体内の栄養条件をモニターしてインスリン様ペプチドを産生することが知られている。しかし、温度と光の環境情報がIPCsにどのような作用をするのかは不明であった。そこで、低温刺激/光刺激を与えた時のIPCsの応答をin vivo whole-cell patch clamp法により解析した。 IPCsの細胞体からの膜電位記録を行ったところ、立ち上がりの早いEPSPとIPSPが高頻度で記録された。したがって、このニューロンは細胞体近くにシナプスサイトを持つと考えられる。また、IPCsはall-or-none spikeを発生するspiking neuronであった。 次に、温度応答を調べた結果、IPCsは低温に晒されると緩やかな脱分極応答を示した。一方、TTX存在下ではこの応答は抑制され、反対に大きな過分極応答を示した。したがって、この細胞は他の低温感受性ニューロンから興奮性の入力を受ける一方、それ自身も過分極性の低温感受性を持つ。 次に、光応答を調べたところ、脳への光照射に応じてIPCsはゆっくりとした小さな過分極応答を示した。この応答は複眼を欠く変異体でも残存したが、TTX存在下では消失した事から、脳内に存在する光感受性ニューロンからの抑制性シナプス入力に由来するものと考えられる。したがって、IPCsは栄養条件に加えて温度と光の情報を受容しており、これらの情報を統合して卵巣の発育と産卵行動を同時に制御していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
休眠と産卵を同時に制御する中枢ニューロンが、温度と光という環境要因によってその電気活動を変化させることが明らかとなった。これは環境による本能行動の適応的調節を同定ニューロンの生理学的応答から説明する道を開く発見で、当初研究計画で三年目に目指した目標に早くも到達する事が出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
最初に、平成27年度の研究成果を二つの論文で発表する予定である。続いて、IPCsに入力する光応答性ニューロンの探索を行う。予備実験からIPCsへと投射し、強い光応答性を示すニューロンがすでに見つかっている。そこで、この光応答が細胞自律的であるかどうかを調べる。また、このニューロンとIPCsの同時記録に挑み、両者の接続関係を探る。また、当研究室で同定された別の産卵制御ニューロンとIPCsとの関係も調べたいと考えている。これらの実験により、より詳細かつ多面的に産卵行動を制御する神経機構を解明していく。
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Research Products
(2 results)