2015 Fiscal Year Annual Research Report
超高次非線形誘電率顕微鏡による次世代電子デバイスのナノスケール評価技術の研究
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14J08084
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
茅根 慎通 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 酸化膜半導体界面 / 走査型プローブ顕微鏡法 / 超高次非線形誘電率顕微鏡法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主として超高次走査型非線形誘電率顕微鏡法(超高次SNDM)を用いたミクロスコピックな酸化膜(SiO2)/シリコンカーバイド(SiC)界面欠陥評価技術の研究に取り組んだ. 今後益々電力需要が増える中で電力制御を担うパワー半導体デバイスの高性能化は必須である.近年,次世代パワー半導体デバイスとしてSiCパワー半導体デバイスが盛んに研究されている.欠陥が少ないSiO2/SiC界面はSiCパワー半導体デバイスに必須の要素である.ところがSiO2/SiC界面品質の制御が難しく長年に渡る多くの研究者の研究にも関わらず未だに界面に多くの欠陥が存在することが課題となっている.SiO2/SiC界面に限らず,酸化膜/半導体界面の欠陥評価には長年マクロスコピックな計測法が用いられ多くの知見が得られてきた.ここにミクロスコピックな計測法が加われば酸化膜/半導体界面の電気的物性の理解が深まり,界面品質の向上に繋がると期待できる.そこで自身が提案している超高次SNDMを応用することで,酸化膜/半導体界面欠陥を微視的に計測する手法の開発に取り組んだ.本手法をここでは局所DLTS(Deep Level Transient Spectroscopy)と呼ぶことにする.ここでDLTSとは古くから用いられている,半導体材料中や酸化膜/半導体界面の欠陥を定量的に測定するマクロスコピックな手法である.局所DLTSは走査型プローブ顕微鏡の探針を用いて局所的にDLTSを行ものである.実際にSiO2/SiC積層構造サンプルを測定し,欠陥分布と考えられる2次元像を得ることに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画にあった欠陥評価手法の開発について進展させることができた.酸化膜半導体界面の欠陥分布をサブミクロンスケールの空間分解能で可視化する局所DLTSの基礎が概ね完成したと考えている.しかしデバイス評価への応用という目標に照らすとまだまだ完成に近いとは言えない.当初の計画では2年目までに欠陥評価手法を確立する予定だったが,まだ手法の基礎ができた段階である.デバイス評価に結びつけていくためには,デバイス性能を表すパラメータとの関係について議論する必要がある.そのような議論を行うためには多くのサンプルについて共通の条件で測定する必要がある.具体的には表面電位と呼ばれるパラメータを一定にしなければならない.しかしながら現状では表面電位をサンプル間で揃えて測定する方法を見いだせていない.また,現状で観測できる欠陥は比較的応答が遅いものに限られる.実際にデバイスの性能に影響しているのは応答が速い欠陥だと言われている.そのため現状の技術では真にデバイス性能に影響を与えている欠陥を可視化することができない可能性が高い. 一方キャリア分布評価技術については進展が無かった.
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Strategy for Future Research Activity |
酸化物半導体界面の欠陥評価手法の確立に注力する予定である.現在までの進捗で言及したように,共通の条件でサンプルを測定する必要がある.ところがプローブ顕微鏡において正確に条件を揃えて複数サンプルを測定することは実際には難しい.そこで2次元像の各測定点においてスペクトロスコピーを行う方法を検討している.具体的にはサンプルの電位を掃引しあらゆる表面電位におけるデータを取得できるようにする.そうすれば測定後に共通の表面電位におけるデータを抽出することが可能になる.ただし,この方法では表面電位が共通になっているデータを抽出することはできても実際の表面電位を絶対測定することはできない.表面電位が定量測定されているとデバイス特性への影響を議論しやすくなる.このために,電位計測を行うプローブ顕微鏡と組み合わせることやサンプル温度に他する測定結果の応答を調べることなどを検討している.
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