2015 Fiscal Year Annual Research Report
同一複合体上に存在する脱アデニル化酵素CAF1とCCR4の作用機構解析
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14J08195
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
新沼 翔 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 脱アデニル化 / デアデニレーション / RNA分解 / ポリ(A)鎖 / CCR4-NOT / CAF1 / CCR4 |
Outline of Annual Research Achievements |
真核生物におけるほとんどのmRNAは3´末端にアデニンが連続する配列、ポリ(A)鎖を持つ。細胞質におけるmRNAの分解は、主としてポリ(A)鎖の分解反応である「脱アデニル化」から始まる。脱アデニル化は主にCCR4-NOT複合体がmRNA上に誘導されることで起こる。CCR4-NOT複合体の構成因子の内、本研究で用いているショウジョウバエにおいて、脱アデニル化活性を持つ因子はCAF1とCCR4の2つである。しかし、CCR4-NOT複合体がCAF1とCCR4という2つの脱アデニル化酵素を持つ生物学的意義は不明である。本研究の目的は、未だ明らかにされていないCAF1とCCR4の使い分け、あるいは協調的作用を生化学的に明らかにすることである。 CAF1及びCCR4による塩基の認識には強いアデニン選択性を持ち3´末端から1塩基ずつRNAを分解していくことが知られている。しかし先行研究からCCR4-NOT複合体はアデニン以外の塩基を持つRNAを分解できる場合があることが示唆されていた。本研究ではCAF1もしくはCCR4がアデニン以外の塩基をもつRNAを分解でき、2つの酵素は塩基嗜好性に違いがあるのではないかという仮説を立て検証を行った。本研究では昨年度中に、CAF1とCCR4はどちらもやはりアデニンに強い選択性を持つが、上流にポリ(A)配列があれば末端にアデニンがなくても分解できることを示した。今年度は昨年度の結果を科学雑誌に投稿した。その結果データに関しては高い評価を頂いたものの掲載には至らなかったため、現在別の雑誌への投稿準備を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの酵素学的な研究からはCAF1とCCR4の違いを見出すことはできなかった。そこで次の段階として、CAF1とCCR4をノックアウトした細胞に野生型あるいは活性変異体のCAF1とCCR4を戻したとき、mRNAの発現変動に違いがあるかを見ることでCAF1とCCR4に使い分けが存在するかを調べることにした。方法として、S2細胞にCRISPR-Cas9 systemを用いることでCAF1とCCR4をノックアウトすることを試みた。しかしCAF1もしくはCCR4のノックアウト細胞を単離することはできなかった。 そこでこれまでの研究と関連があり、かつ重要な問題である「microRNA依存的な脱アデニル化反応におけるATPの必要性」を明らかにすることにした。microRNAはCCR4-NOT複合体を誘導することで脱アデニル化を引き起こすが、脱アデニル化経路にATPが必要であるとの報告がある。しかし脱アデニル化経路においてATPを必要とする段階は明らかになっていない。これまでの研究ではATPをADPに変換する酵素を細胞抽出液中に添加すると脱アデニル化反応が顕著に遅れるため、脱アデニル化反応にはATPが必要であると考えられていた。しかしこの方法では反応系からATPが減った影響とADPが増えた影響を切り分けることができない。そこでゲルろ過カラムを用いてATPやADPを含む小分子を除き、後からATPやADPを加え戻す方法を考えた。この方法を用いてATPの必要性を調べてみると、予備的な結果であるがATPは確かに必要であり、microRNAがmRNA上に誘導されてから脱アデニル化酵素が誘導されるまでの間にATPが必要であることを示す結果が得られた。新たな知見につながる結果が得られたことから研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はmicroRNAの脱アデニル化反応においてATPが必要とされる段階を特定することを目指す。目的のタンパク質を人工的にmRNA上にリクルートできる系を用いて、CAF1やCCR4を誘導してみるとATPがなくても脱アデニル化反応は進行する。そこでまずはmicroRNAが脱アデニル化を引き起こすために必要な因子を上流から順々にmRNA上に誘導し、ATPがないと反応が進まない段階を特定する。特定したあとはATPがない場合に脱アデニル化に必要な複合体が正常に結合を維持しているのか調べる。
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Research Products
(2 results)