2014 Fiscal Year Annual Research Report
高い超対称スケールを持つ超対称標準模型の現象論的研究
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14J08296
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永田 夏海 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 暗黒物質 / 超対称性理論 / 陽子崩壊 / 大統一理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
欧州原子核研究機構において現在稼働している,大型ハドロン衝突型加速器にてこれまで行われた実験結果は,超対称性のスケールが電弱スケールと比べて非常に高いということを示唆している。高い超対称性スケールを持つ超対称標準模型は,暗黒物質を説明しうる。なかでも,ヒッグシーノ暗黒物質は有力な候補の一つである。ヒッグシーノ暗黒物質を高いスケールの超対称標準模型で議論する場合,ヒッグシーノ質量スケール,電弱スケール,超対称性スケール間のスケール差を適切に考慮して,計算を行わねばならない。そこで,このスケール差に由来する大きな量子補正を有効理論の立場からくりこみ群方程式をもちいて適切に取り入れることで,計算精度を向上させ,ヒッグシーノ暗黒物質シナリオを検証する枠組を提供した。また,ここで確立した方法を一般化し,電弱相互作用を行う暗黒物質についてもその検証可能性を議論した。加えて,暗黒物質直接検出実験において重要な量となる,暗黒物質・核子の散乱断面積の計算についても,有効理論の立場から整理し,一般的な取扱方法を与えた。
これまでの研究から,高いスケールの超対称性を持つ標準模型は,最小大統一理論と矛盾しないことが明らかになっていた。そこで,具体的な超対称性模型をとりあげて,陽子崩壊からそれを探ることができないかを議論した。
SO(10)大統一理論は,暗黒物質を自然に説明できる可能性があることが知られている。そこで,ゲージ結合定数の統一を保ちつつ,低エネルギーで適切な暗黒物質を含む模型が構築可能であることを実際に示し,その検証可能性を議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上述の,研究実績の概要で記したように,私は今期大統一理論に関する研究を2つ仕上げた。これは,ミネソタ大学のKeith Olive氏,Jason Evans氏,Jiaming Zheng氏と仕上げたものである。予定されていたように,ミネソタ大学に長期出張し,そこで研究を開始し,今期中に2つの仕事を終わらすことが出来たことから,当初想定していたよりも順調に仕事を行えたのではないかと考えている。それに加えて,ドイツDESYのポスドク研究員である白井智氏とも別個に2本の論文を,また名古屋大学の久野純治氏,長井亮氏とも1本の論文をそれぞれ仕上げることができた。さらに,2つの国際会議での口頭発表,1つの国内会議でのポスター発表,Kavli IPMU, Academia Sinica, National Taiwan University, National Central University, 益川塾,早稲田大学にてセミナーを行った。このように,数多く発表の機会をいただけたことも,自らの研究を同分野の人々に広めることができたという点で,研究計画の進展に一役買ったのではないかと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,欧州原子核研究機構の大型ハドロン衝突型加速器がそのエネルギーを上げて新たな結果を出そうとしている。そこで,この実験において検証可能な模型の研究を,今年度は積極的に行っていこうと考えている。具体的には,比較的自然さを保った超対称性標準模型の検証可能性と,超対称性スケールの決定とが最重要課題である。 加えて,現在までに,大型ハドロン衝突型加速器による実験結果は,いくつか標準模型では説明できない事象を報告している。そこで,これらを説明しうる模型の構築とその検証可能性を議論したいと考えている。そのような模型は,今年度・あるいは来年度中には直ちに検証可能であると期待している。 大統一理論の枠組みで暗黒物質を説明する試みも,今後ますます注目を集める分野であると考えている。そこで,できるだけ一般的・体系的な観点から,可能な暗黒物質候補を整理し,それらをどのように検出するかを議論することで,この分野をますます発展させることができるのではと考えている。 大型ハドロン衝突型加速器における実験結果が標準模型と無矛盾であった場合,次世代の加速器である電子陽電子衝突型加速器で上述の模型を検出することができるかが次の重要な課題となる。これらについても,たとえ新たな粒子を直接作り出すことが出来なくても,精密計算を通じて探索することができないかを考え,その達成可能性を議論したい。
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Research Products
(8 results)