2014 Fiscal Year Annual Research Report
テラヘルツビームを利用した低次元電子の新規制御法の開発
Project/Area Number |
14J08397
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
根本 夏紀 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | テラヘルツ波 / 偏光制御 / 低次元系 |
Outline of Annual Research Achievements |
低次元系の制御に用いるテラヘルツ波の空間的な強度分布や偏光状態を計測するために、テラヘルツ波の2次元検出が可能な検出器(THzカメラ)の開発と、テラヘルツ電場の強度と向きを高速かつ精密に測定可能な新規測定法の開発を行った。本研究で制御に用いるテラヘルツ波はベクトルビームと呼ばれるもので、一般的な光学実験で使われているガウシアンビームと空間的な強度分布や偏光状態が異なる。そのため、物質制御のために用いるテラヘルツ電場の大きさや向きを一般に用いているガウシアンビームより精度よく測定する必要があり、今年度開発した手法はそれにたえるものである。 今回の成果により、テラヘルツ波の強度分布や偏光状態を決定することができるようになったため、実際に発生させているテラヘルツベクトルビームの状態を実際に測定した後、来年度より低次元電子系の制御に向けたサンプルの調達と実際の制御実験を実施していく予定である。 また、今年度開発したテラヘルツ波の計測手法は本研究のみではなく、より一般的なテラヘルツ波を用いた研究にも適用可能なものである。例えばTHzカメラを用いれば、プラスチック製品や錠剤中の異物混入の検査を行えると考えられる。また、偏光状態の計測はテラヘルツ領域に指紋スペクトルをもつ生体分子の識別や、非接触に半導体の電気的特性の測定に適用できる。 これらの成果は国内の研究会(平成26年度第2回テラヘルツ技術セミナー)や、国際学術誌(Optics Express vol.22)にて発表済みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は低次元系の制御に用いるテラヘルツ波の整形を行う計画であったが、その整形したテラヘルツ波の強度分布や偏光状態などの特性の評価法の開発を行った。その結果、これまでの方法では計測が難しかったレベルでテラヘルツ波の空間強度分布や偏光状態を測定することができるようになっており、これにより発生させたテラヘルツ波の正確な計測が可能となる。開発した手法を用いたより正確な測定はこれから実施する予定であるが、テラヘルツ波の整形自体は概ね終わっており、来年度以降すぐに低次元系の制御に移っていけると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は実際に制御を行う物質系の精査と、実際のテラヘルツ波照射下での物質の状態変化の測定を行う。物質に関しては、これまで想定していた低次元電子系のみではなく、強磁性体や反強磁性体などの磁荷を有する物質系も考えている。概ね計画通りに研究が進められているが、テラヘルツ波の強度が足りないかもしれないと考えられるが、その場合は金属ワイヤーによるテラヘルツ電場の増強効果等をもちいて解決することを考えている。
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