2015 Fiscal Year Annual Research Report
テラヘルツビームを利用した低次元電子の新規制御法の開発
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14J08397
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
根本 夏紀 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | テラヘルツ波 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はこれまで開発を行ってきたテラヘルツ波の偏光計測法の更なる感度向上を目指した。テラヘルツベクトルビームを利用した物質の電子状態や時価の状態を制御するための実験では、テラヘルツ電場の効果と磁場の効果をしっかりと切り分けて考える必要があり、このために感度向上が必要となったためである。同時に、テラヘルツベクトルビームを利用した物質の制御実験の対象としてグラフェンや硫化モリブデンといった低次元系物質だけでなく、磁性体についても調べた。そして磁性体の中でも物質内で分極と磁化がお互いに相関を持つような物質であるマルチフェロイックスを用いて実験を行うことができると考えている。これらの物質ではテラヘルツ電場により物質内の磁化を駆動することが可能であり、現状のテラヘルツベクトルビームの発生法により得られているテラヘルツ電場の大きさでも十分に磁化の制御が可能であると考えられる。これと並行して、低次元系の電子状態を制御するためにテラヘルツベクトルビームの高強度化にも取り組んだが、1桁ほど強度が足りないという状況になっている。 また、研究成果を社会に公表していくという点については、昨年度までに開発したテラヘルツカメラの感度を向上したことを論文にまとめ、登校することに成功している。また、テラヘルツ波の偏光状態を子細に調べるためのテラヘルツ偏光計測の新しい手法に関しても、国際学会で報告をすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までの研究成果をより発展させる方向として、テラヘルツ波の偏光計測の手法をより精度の高いものとすることができた。また、現状発生させることのできていたテラヘルツベクトルビームの電場強度ではグラフェンや硫化モリブデンといった低次元系の電子状態を制御するには強度が不足しているということが判明したため、さらなる高強度化と同時にテラヘルツベクトルビームによる制御実験の新たな対象物質の模索を行った。結果として、テラヘルツベクトルビームの強度としては低次元系を制御するためには若干不足しているという状況は変わらないものの、テラヘルツベクトルビームにより制御を行う対象の物質としてマルチフェロイックスという磁性体を見出すことができた。このような物質では磁性体内での分極と磁化が相関を持つような構造を持っており、それほど大きくはない外部電場により磁化の状態を変化させることができる。 このためにテラヘルツベクトルビームの電場成分を利用することができると考えており、現在発生させることのできているテラヘルツベクトルビームの強度は制御に必要な電場強度としても十分なものであるため、今後このような物質で実験を進めていくことができるものと予想している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度まででテラヘルツベクトルビームの高強度化とより子細に変更状態を測定する手法の高精度化に取り組んできたが、低次元系の電子状態を制御するような実験に用いるには依然としてやや強度が不足しているという状況になっている。 そのため今年度は制御対象とする新たな物質して、磁性体の1つであるマルチフェロイックスを考えている。マルチフェロイックスは物質内の分極と磁化がカップルしたような特性を持っている物質であり、外部から電場を印加することで磁化の状態を制御することができると知られている。これにより通常の磁性体よりも容易に磁化の状態を制御可能になると考えれており、必要な電場強度として、現在までに発生させることができるようになったテラヘルツベクトルビームの電場強度は十分なものであるため、磁化の制御実験をテラヘルツベクトルビームをこのようなマルチフェロイックスに照射することでできるようになる。本研究においては、テラヘルツ波による磁化の状態制御も研究対象とする1つになっており、これらの実験はそれによく合致するものであると考えている。
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