2015 Fiscal Year Annual Research Report
拡張ジグザグ格子を有する超伝導体におけるパリティ混成効果の研究
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14J08469
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
廣瀬 峻啓 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | パイロクロア酸化物 / ドメイン壁 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は前年度に引き続き、パイロクロア酸化物Cd2Os2O7の磁壁の物性に注目した。Cd2Os2O7は227 Kの温度で金属絶縁体転移と同時にOsのモーメントがall-in/all-out(AIAO)の構造に反強磁性秩序する物質である。前年度、時間反転対称の関係にある2種類の磁気ドメイン間の磁壁が強磁性と電気伝導性を合わせ持つことを発見した。本年度は磁壁の磁化を詳しく調べることで、磁壁には2-in/2-out構造の{001}面と、3-in/1-out構造の{111}面および{110}面の3種類以上が共存していることを明らかにした。 AIAO秩序のドメイン内部は空間反転対称性をもつ一方で、これらの磁壁では空間反転対称性が破れており、磁壁では拡張ジグザグ格子と類似した状態が実現している。この局所的な空間反転対称性の破れによる反対称ポテンシャルは磁壁の方位によって異なるため、方位の異なる磁壁の物性を調べて比較することで、Cd2Os2O7における局所的な空間反転対称性の破れやパリティ混成の効果を議論することが可能である。さらに、バルク全体で空間反転対称性が破れる特異な構造相転移とそれにともなう超伝導を示すパイロクロア酸化物Cd2Re2O7との関連から、この物質におけるパリティ混成の効果について議論できる可能性がある。これを実現するには異なる方位の磁壁の物性を区別して測定する必要があり、現在はそのために必要な磁壁を制御する技術について検討を行っている。これまでの所、収束イオンビームにより加工した微細なCd2Os2O7の単結晶試料片において、単一ドメイン状態の実現と単一磁壁の誘起を行うことに成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
磁化の解析から、磁壁の方位や局所的なスピン構造を推定することができた。また、微細単結晶試料片において単一磁壁を誘起することに成功した。これらの成果を元に、最終年度内で異なる対称性をもつ磁壁の物性を比較し、本テーマの目標を達成することができそうである。
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Strategy for Future Research Activity |
電流の量や方向、磁場との組み合わせ、および試料表面への溝などの微細加工により磁壁の方位を制御する技術を確立した後、磁壁の磁気輸送特性の測定と比較を行っていく。
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Research Products
(4 results)