2015 Fiscal Year Annual Research Report
栄養状態が生殖に及ぼす影響の生体内神経・内分泌機構の解明
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14J08559
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長谷部 政治 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 生殖 / 栄養状態 / GnRH / グルコース / 電気生理学 / 絶食 |
Outline of Annual Research Achievements |
様々な生物種において生殖と栄養状態が密接に関係していることが報告されているが、その関係性は生物種・雌雄によって多岐に渡る。このような、生物種・雌雄毎に異なる栄養状態に応じた生殖機能を制御する神経・内分泌機構については未だ不明瞭な点が多い。 この研究課題の解決のために、本年度私は雌雄のメダカにおいて栄養欠乏:絶食が生殖機能に及ぼす影響を引き続き解析した。 絶食により雌メダカでは生殖機能は強く抑制されたのに対し、雄メダカにおいては2週間の絶食でも生殖機能・行動に顕著な影響は見られなかった。 生殖への影響に雌雄差が見られた絶食について、次に生殖の中枢制御機構で必須な役割を持つ視床下部GnRH1ニューロンの神経活動に及ぼす影響を解析した。電気生理学的手法:パッチクランプ法を用いた解析を行ったところ、通常給餌時のグルコースレベル(血糖値)の人工脳脊髄液(ACSF)記録条件下では、2週間の絶食によるGnRH1ニューロンの神経活動への顕著な影響は見られなかった。生体内に近い記録条件下にするために、絶食時と同様の低グルコースACSFにした所、雌メダカにおいてGnRH1ニューロンの神経活動は直接的に抑制されることを発見した。一方で、雄メダカにおいては、2週間絶食・低グルコースによるGnRH1ニューロンの神経活動への顕著な影響は見られなかった。 上記の解析結果より、メダカにおいて絶食による生殖抑制と絶食時の低グルコースによるGnRH1ニューロンの神経活動の抑制が、どちらも雌特異的に見られることが分かった。この雌特異的な相関性より、栄養状態に応じたグルコース(血糖値)変化によるGnRH1ニューロンの神経活動制御が、栄養状態依存的な生殖制御に寄与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の解析結果より、メダカにおいて絶食が生殖機能・行動を雌特異的に抑制することを発見した。また、絶食による生体内グルコース低下が生殖制御中枢のGnRH1ニューロンの神経活動を、こちらも雌特異的に抑制することを見つけた。雌特異的な点で絶食による生殖機能抑制と相関性が見られた、この生体内のグルコースレベル変化によるGnRH1ニューロンの神経活動制御メカニズムが、栄養状態に応じた生殖機能の中枢制御において重要な役割を果たしている可能性が考えられる。そのため、本年度までの解析により、栄養状態に応じた生殖制御に寄与する神経・内分泌システムの1つの経路を発見し、一定の成果が得られたと思われる。上記の研究進捗状況により、研究課題の解決のために概ね順調に研究が進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの解析により、栄養状態に応じた生殖機能の中枢制御の1つの経路として、グルコースレベルに応じたGnRH1ニューロンの神経活動制御システムが示唆された。来年度は、まずこのグルコースレベルに応じたGnRH1ニューロンの神経制御の細胞内メカニズムについて、より詳細に解析する。また、GnRH1ニューロンのグルコース感受性について雌雄差が見られたため、どのようなメカニズムによってGnRH1ニューロンのグルコース感受性に雌雄差が生じたかについても解析を進めていく。
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Research Products
(2 results)