2014 Fiscal Year Annual Research Report
結び目と3次元多様体の有限型不変量とカンドルを用いたトポロジーの研究
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14J08576
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
阿部 翠空星 埼玉大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 結び目、絡み目 / 3次元多様体 / 不変量 / 有限型不変量 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、3次元多様体の有限型不変量の研究結果を述べる。私は3次元多様体の有限型不変量を大槻型不変量から一般化した。ある条件を満たす3次元多様体にフィルトレーションを入れd次の有限型不変量を次のd+1次フィルトレーション全体では0になることと、各d次についてd次の有限型不変量の全体は有限次元である3次元多様体の不変量線型写像であることを再定義をした。1つ目は連結コンパクト有向3次元多様体の1次元ホモロジーから定まる絡み目のd次のバシリエフ不変量を、その3次元多様体のd次の有限型不変量とする実験的なものであった。2つ目は絡み目全体に順序を入れ、ある連結有向閉3次元多様体が得られるデーン手術の絡み目の中で最小なもののd次のバシリエフ不変量を,その連結有向閉3次元多様体のd次の有限型不変量とするものであるが、この不変量は有限型不変量の全体は有限次元であることが証明されていないため現在研究中である。3つ目は次の章で述べる。研究結果としてある条件を満たす3次元多様体のフィルトレーションを考えるより、各d次についてd次の有限型不変量の全体が有限次元であることを示すほうが難しい。私は写像類群を用いて示す新しい方法で有限次元であることを示した。例えば、レンズ空間はトーラスでヒーガード分解するとヒーガード図式はメリディアンとロングチュードの有限個の積で表せるため、有限型不変量全体が有限次元であることが分かる。次に、私は結び目のカンドルを用いた不変量と有限型不変量の関係についてquasi finite type invariantを新しく定義した。これは、有限型不変量の特異点のフィルトレーションを一般化したものである。任意の絡み目に対して、ザイフェルトカンドルで計算されたカンドルシャドウコサイクル不変量はZ[t]/(tのp乗-1)に値をとることと、Mochizuki 3-cocycleの式の形からからquasi finite type invariantが必ず定義できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、Quasi finite type invariantはある結び目のクラスしか計算できない。なぜなら、任意の絡み目に対してカンドルシャドウコサイクル不変量が綺麗な形をしていないからである。そのためカンドルシャドウコサイクル不変量が綺麗な形をしているある絡み目のクラスに対して綺麗な形で具体例を示せる。それは2橋絡み目やトーラス絡み目などである。カンドルシャドウコサイクル不変量の値をZ[t]/(tのp乗-1)からZ[t]/(tのp-1乗+…+t+1)で考えるとt=1でp-2のべき乗までベキ級数展開できる。このとき、展開した係数はmod pで考えるとZ/pZの元でカンドルシャドウコサイクル不変量の値から一意に定まる。d次のquasi finite type invariantの値をベキ級数の(p_d-1)/2番目の係数の値のmod pでの値と定義する(クラウゼン・フォンシュタウトの定理よりこの係数はmod pでの値は0ではない。)。さらに、絡み目LをLに沿った球面の2重巡回分岐被覆させた3次元多様体M_Lに対しては、絡み目Lのザイフェルトカンドルシャドウコサイクル不変量はM_Lのダイグラーフ・ウィッテン不変量の値の群環内の群の元による掛算を除いて等しいことが示されている。従って、3次元多様体M_Lにおいては新しい有限型不変量が導かれる。これが前章でふれた3つ目の3次元多様体の有限型不変量の例である。このようにしてカンドルシャドウコサイクル不変量から3次元多様体の有限型不変量を定義することに成功した。 次にカンドルを用いた不変量と有限型不変量の関係について、適切なR行列を用いてカンドルコサイクル不変量が表されることが示されて、ローラン多項式環に値をとるカンドルコサイクル不変量の値にt=eのh乗を代入してhでベキ級数展開したときのhのd乗の係数はd次の有限型不変量になる。とてもシンプルかつ驚くべき結果が最近えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
前章で紹介した2つ目の新しい3次元多様体の有限型不変量の絡み目全体に順序を入れ、ある連結有向閉3次元多様体が得られるデーン手術の絡み目の中で最小なもののd次のバシリエフ不変量を、その連結有向閉3次元多様体のd次の有限型不変量とする不変量は従来の量子SO(3)不変量では判別が困難なレンズ空間のL(65,8),L(65,18)を簡単な計算で判別できる点などから応用が期待されるため、各d次についてd次の有限型不変量の全体が有限次元となることを示すことが課題となる。今までに使用してきた写像類群の方法とは異なる示し方が必要である。難解であったのは結び目ではなく絡み目全体に有限次元となる空間を探す作業と考えてしまうとうまくいかないことが示せた。絡み目への順序を入れる段階で工夫が必要であると研究中である。 次に今まで、有限型不変量とカンドルを用いた不変量の関係は全く不明であった。しかし、カンドルを用いた不変量で最も一般的なコサイクル不変量に関しては関係性が完全決着した。驚くべきことは多項式不変量と同様な方法のベキ級数展開で得られることである。今後はカンドルを用いた他の不変量に関して研究をおこなう。特に重要なのはカンドルホモトピー不変量といわれる不変量である。この不変量はカンドルを用いた不変量の一番強い不変量(統一不変量)であるため、完全不変量と予想されている不変量との関係はとても重要である。
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Research Products
(5 results)