2014 Fiscal Year Annual Research Report
金属/担体間の相互作用の制御による天然物中間体の高効率合成
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14J08883
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
森本 直樹 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 酸化グラフェン / 水素化反応 / 酸化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
酸化グラフェンの合成過程において酸化剤である過マンガン酸カリウムの量を変化させることで酸化グラフェン中の酸素含有量を20 w%から60 w%まで5% 刻みで制御することに成功した。また酸素含有量60 w%の酸化グラフェンを還元剤の量を調整して還元するによっても60 w%から10 w%まで約5%刻みで酸素含有量を制御することが可能になった。調整した各酸素含有量の酸化グラフェンは赤外吸収(IR),X線光電子分光(XPS),粉末X線回折(XRD)などの機器分析により化学状態を評価した。また,各酸化グラフェンの導電性,金属の吸着量,メチレンブルーの吸着量,ベンジルアルコールの酸化能力を評価し酸素含有量と物性の関連性を調査した。 10,30,60 w%の酸素含有量の酸化グラフェンにパラジウム(Pd)を担持させ,Pd/酸化グラフェン触媒を調製し接触水素化反応に応用することで反応性を制御した官能基選択的な水素化反応が達成できた。2015年5月にX線吸収微細構造(XAFS)を用いて触媒の構造解析を行い反応性制御の詳細なメカニズムを解明する予定である。 また,研究を進めていく中で酸化グラフェンが芳香族脱水素カップリング反応の酸化剤として働き,炭素-炭素結合の形成反応に有効であることを見出した。反応後,回収される酸化グラフェンは酸素官能基が除去され共役系が回復しているため,良好な導電性を示すようになり導電性材料としての利用が可能になる。また本反応では酸化グラフェンの酸素官能基が酸化剤として働いており,金属を使用しないクリーンな反応系である。機器分析を行い反応メカニズムを明らかにし,2015年度内ジャーナルに投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酸化グラフェンの酸素官能基量と官能基の種類の制御に精力的に取り組み、酸素官能基量は精密に制御することが可能になった。導入する酸素官能基の制御は完全とは言えないが酸化方法を変化させることで概ね達成できるようになった。また合成したそれぞれの酸化グラフェンについて物性の評価を行い,酸化グラフェンの応用開発に向けて体系的な指針を示すことに成功した。Pd/酸化グラフェンを用いた接触水素化反応への応用はXAFSによる触媒状態の解析を行い官能基選択性発現に関するメカニズムに関する有益な知見を得た。2015年度に再度XAFSを用いた触媒の構造解析を行いより詳細なメカニズムを明らかにする予定である。 酸化グラフェンの物性を評価していく過程で酸化グラフェンが酸化剤として働くことを見出し,有機合成上重要なC-C結合形成反応に展開している。
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Strategy for Future Research Activity |
Pd/酸化グラフェン触媒による水素化反応は本年度に再度XAFS測定を行いより詳細な触媒の構造解析を行う。 Pd以外に白金(Pt),イリジウム(Ir),ルテニウム(Ru),ロジウム(Rh)などの金属を酸化グラフェンに担持させ同様に接触水素化反応,酸素酸化反応における酸素含有量と反応性の関係を明白にする。金属によっては配位子交換で酸化グラフェンに固定化できない可能性があるため,ナノ粒子化して担持する。 また,酸素含有量の低い酸化グラフェンでは強いπ-π相互作用により凝集し比表面積の低下が起こることを確認している。当グループでは還元型酸化グラフェンにイオン性界面活性剤を添加することで還元型酸化グラフェンの層間距離が広がり触媒活性が向上することを見出している。イオン性アミノ酸は対イオンをチューニングすることで界面活性剤としての機能を最適化でき,またアミノ酸由来の不斉中心を有している。イオン性アミノ酸に性界面活性剤や不斉源としての機能を担わせ,凝集防止による高比表面積化と不斉環境の構築を行う。 昨年度,酸化グラフェンの物性を調査していく中で酸化グラフェンが酸化的カップリング反応の酸化剤として有効であることが明らかになった。この反応はメタルフリーで進行し.炭素-炭素結合をマイルドな条件で形成することができるため,グリーンケミストリーの観点から非常に魅力的な反応である。本反応の適応性,有機合成への応用可能性を調査し,酸化グラフェンによる酸化的カップリング反応とPd/酸化グラフェン触媒による触媒反応を組み合わせたハイブリッド型の反応を構築していく。
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Research Products
(7 results)