2015 Fiscal Year Annual Research Report
寄生植物コシオガマにおける吸器発生メカニズムの解明
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14J08907
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
若竹 崇雅 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 器官発生 / 再分化 / 寄生植物 / トランスクリプトーム / オーキシン |
Outline of Annual Research Achievements |
寄生植物が宿主植物に寄生する際に発達させる「吸器」の発生について研究を進めている。吸器の発達過程では、一度ある細胞種に分化した細胞が別の細胞種に再分化している可能性を示唆するデータを得ている。前年度には、この発生過程を理解するために、植物の根の細胞種特異的に発現するマーカーを作成した。今年度はこれらのマーカーの吸器発生過程での発現動態をライブイメージングの手法を用いて解析した。吸器の中心部分では維管束始原細胞のマーカーと考えられる遺伝子の発現が上昇していることが分かった。一度、皮層細胞や、内皮細胞に分化した細胞が吸器の発生過程中に維管束様の細胞へと再分化していることが示唆された。また、この再分化には植物ホルモンのオーキシンが関わっていると推測されたので、オーキシン応答性プロモーターの発現パターンの解析を行った。オーキシン応答性プロモーターの発現は、のちに道管細胞が分化する領域と重なることがわかった。 前年度に行った組織特異的なトランスクリプトーム解析から、寄生植物と宿主植物の境界で発現する遺伝子を多数同定した。現在これらの遺伝子のうち特に発現の上昇率が高いものについて、CRISPR/Cas9を用いた逆遺伝学的手法を用いて機能解析を進めている。当研究室で得られた、もう一つのトランスクリプトームデータと合わせて、クラスタリング解析やネットワーク解析も進め、重要遺伝子の同定を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、前年度に確立したマーカー遺伝子の発現パターンを確認し終えることができた。植物ホルモンのオーキシンの濃度勾配の動態の解析は、付加的な実験であったが、組織の細胞パターンと合致する結果が得られており、その点で計画以上の進展である。 CRISPR/Cas9を用いた逆遺伝学解析については、ノックアウトの効率が高くなく系の改良にやや時間を要したが、現在は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
側根発生との比較から、内鞘細胞がどれだけ吸器の発生に寄与しているかのデータが重要になると考えられる。クローナルな解析を加え、より正確なFate mapを描けるように解析を進める。オーキシンについては輸送体の発現を解析し、濃度勾配をつくる分子実体を明らかにする。 CRISPR/Cas9を用いた逆遺伝学解析については、表現型が得られた遺伝子について解析を進める。遺伝学的解析をできないが、これまでに確立してきたマーカー遺伝子の発現を見ることで、発生過程のどの部分に関わっているかの推測が行える。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] 寄生植物の吸器形成機構とその機能2015
Author(s)
若竹崇雅、Thomas Spallek, Simon Saucet, 吉田聡子、白須賢
Organizer
日本植物学会第79回大会
Place of Presentation
朱鷺メッセ 新潟コンベンションセンター(新潟県・新潟市)
Year and Date
2015-09-06