2015 Fiscal Year Annual Research Report
二酸化炭素還元へ向けた分極制御窒化物半導体による可視光応答型新規光電極の開発
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14J08965
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 亮裕 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 窒化物半導体 / 光電極 / 水分解 / 水素 / 分極 / トンネル接合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では, 極薄AlN層を内部に導入した独自の構造を持つ窒化物半導体光電極により, 可視光を利用した燃料生成実現を目指す. 本年度はInGaNを利用した可視光照射下での光電極動作の実証を狙い実験を進めた. また, それに付随するMOCVDによる結晶成長上のプロセス改善にも取組んだ. AlN/GaN界面の急峻性の向上にはAlN層の低温成長が有効であるが, 一方で低温成長したAlNでは表面平坦性の悪さなど結晶の品質に問題があった. 加えて転位が発生することでAlNの上層に対しても悪影響を与えており, 可視光を吸収可能なInGaN層を利用する際に特に妨げとなった. この問題の解決には低温でのAlN層を成長後に続けてキャップ層として数nmのGaNを成長し, その後昇温することが有効であることを見出した. この低温GaNキャップ層の導入により, AlGaN層の緩和を防ぐことに成功し, サンプルの表面モフォロジーも大幅に改善した. こうした低温GaNキャップ層を導入した光電極ではより高い開放電圧を示し, 貫通転位密度の低減を反映した結果を得た. また, InGaNを光吸収層として利用した場合にも低温GaNキャップ層が有用であることが明らかとなった. InGaNを低温AlN上に成長した場合, GaNキャップを導入していない場合には1010 cm-2代と非常に多くのピットが見受けられたが, 低温GaN層を導入することで下地の貫通転位密度と同程度のピット密度となった. さらに, InGaNを利用した際には可視光(波長>390nm)での光電極動作の実証に成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
InGaN層は低温成長が不可避であるために, 当初より転位の悪影響が強まることが予想された. 従って低温成長AlN層の導入による転位密度の大幅な増加は非常に重大な問題となるが, 低温GaN層の導入により, 低温AlN層の成長による転位の発生を最小限に抑えることに成功した. 更にサファイア基板と比べて低転位密度となるGaN自立基板を利用した場合にも転位の明確な増加を示唆する結果は得ておらず, 低温GaN層の導入はInGaN/AlN/GaN構造の特性改善には非常に有用であると考えられる. また, InGaNの利用による光電極の可視光下での動作の実証にも成功したことから, 研究はおおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
現段階で利用しているInGaNのIn組成は約10%であるが開放電圧の明確な低下は観測しておらず, Inの高組成化による更なる長波長の光の利用が期待される. また, AlN層導入した際の転位増加の抑制に成功したことから, 多接合構造の実証に取組む際にも転位の影響は問題とならないことが予想される. 今後はこれら二つを併せることにより, 可視光照射下での水の分解を比較的安定的に行なうことが可能な光電極の実現を目指す.
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Research Products
(11 results)