2014 Fiscal Year Annual Research Report
ＡＴＬＡＳ実験におけるＨｉｇｇｓ粒子のττ崩壊モード解析による湯川結合の測定
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14J09266
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| Research Institution | The University of Tokyo |
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Principal Investigator |
陳 詩遠 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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| Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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| Keywords | LHC / 新物理探索 / 国際研究者交流 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
CERN Large Hadron Collider (LHC) での陽子陽子衝突実験グループ・ATLAS Collaborationは2015年1月, Higgs粒子からτ粒子対への崩壊を4.1σという有意度で確認したことを発表した. CMSとの結果とも総合すると, Higgs-τ結合の存在は確定的であり, これが標準理論で示唆される湯川結合かを精査し新物理に迫ることが今後の展望である. 近年の理論・実験の結果を鑑みるに, これには5-10%という高精度で結合の強さを決める必要があることが示唆されている. 従って統計量を増やすことが何より肝要であり, 2015年夏から2018年まで予定されているLHCの運転 (Run2) によってこれは達成される見込みである. 一方でRun2初期のデータ統計量が少ない段階においては未知粒子の直接探索が新物理研究において効果的である. 特に超対称性理論における電弱ゲージーノは電弱セクターにおける有力な新物理候補であり, またHiggsとフェルミオンの結合にも間接的に影響することから非常にインパクトが大きい.
このような見地から, 前年度はLHC Run2での実験環境を想定した電弱ゲージーノ探索解析の研究を行った. 具体的にはそれまでの消失運動量などの変数で背景事象をカットする単純な解析を抜本的に見直し, 背景事象と信号事象の行列要素から構成した尤度関数による背景事象分離法を導入した。この手法は観測される情報の全てを余すことなく反映させられる多変量解析的な手法である点で従来の解析法にまさっており, モンテカルロシミュレーションを用いた見積もりで感度がおよそ2倍改善されることがわかった. またこの行列要素および尤度関数は理論から第一原理的に計算が可能な量であるため, 最終的にアルゴリズムがブラックボックス化しやすい機械学習ベースの多変量解析（Boosted Decision Tree, Neural Networkなど）に比べて可視性が高く, 物理的な意味付けが容易である点も重要である. 以上の結果を日本物理学会で2回発表を行った.
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
LHCはメンテナンスやアップグレードのため2012年12月より運転を休止している. そして2015年5月より重心系エネルギー13TeVというかつてない高いエネルギーで衝突実験を再開する予定である (Run2). Run2と従来の運転 (Run1) の主な実験的相違は以下の2つである.
1. 増加する衝突エネルギーによる, 各物理過程の断面積の変化.
2. ビーム交叉あたりの陽子衝突数の増加や, 新たに導入された測定器の存在による, トリガーを含む測定の環境および粒子再構成の性能の変化.
解析においてもこれらの変化を反映して最適化をやり直す必要が生じる. とりわけ新物理探索ではその背景事象への理解が最も重要であるが, 上で挙げた要因のためRun2では背景事象のパターンがRun1と大きく変わることが想定されており, この問題は非常にクリティカルである. よってこの段階においては, Run1の背景事象のモデリングをRun2の環境下で補正すること, またそれを踏まえた背景事象分離法などを構成するのが解析の基本的な流れとなる. 上の1.に相当する変化に対する補正は, Run1とRun2の環境でのモンテカルロシミュレーションの比較をすることによって概ね可能であり, それを踏まえた信号事象と背景事象の分離アルゴリズムの構築まで達成している. 2.に相当する補正は2015年5月以降に取得されるRun2のデータが必要であり, 現段階では満足に行えない. 現段階でできることを概ね達成しているという意味で, 本課題はおおむね順調に進展していると考える.
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| Strategy for Future Research Activity |
2015年5月からLHCは物理データの取得を再開する予定だが, 上の【現在までの達成度】でも触れたように, Run2の実データを用いた測定器や粒子再構成アルゴリズムの較正, およびRun2における背景事象のモデリングが最優先でやるべき研究である. これらを2015年末あたりまでに完了させる目途を立てている。
その先の展望としては, 背景事象のモデリングに応じた, 信号事象・背景事象分離アルゴリズムの最適化, またデータの統計が十分溜まり次第, 信号領域をunblindし, 最終結果を報告することを考えている. これらは2016年3月を目標としている.
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