2014 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内プロテアーゼに応答して薬物を放出可能な新規DDSキャリアーの開発
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14J09314
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
板倉 祥子 京都薬科大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | ドラッグデリバリー / 薬物放出 / プロテアーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、薬物送達キャリアーに内封した薬物の効果を向上させるために、細胞内でリポソーム型キャリアーからの薬物放出が促進するがん治療DDSを開発することを目的とした。そのために、がん細胞で高活性なプロテアーゼであるγ-セクレターゼに着目し、その基質となるペプチドLiposomal membrane disturbance peptide(LMDP)をリポソームに組み込むことで、膜構造が乱れ、内封薬物の放出が促進されるのではないかと考えた。平成26年度は、LMDPを組み込んだリポソーム(LMDP-lipo)の構築とin vitroでの薬物放出の評価を行った。γ-セクレターゼ存在下では、LMDP-lipoからの内封カルセインの漏出が促進された。さらに、この漏出の促進はγ-セクレターゼ阻害剤の共存下で抑制されたことから、LMDPがγ-セクレターゼによって切断されたことで内封薬物が放出されることが示唆された。また、培養細胞におけるLMDP-lipoからの内封カルセインの放出プロファイルを共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)のTime-lapse撮影により観察した結果、細胞に取り込まれたLMDP-lipoは、時間の経過と共に脂質膜が消失し、内封カルセインが細胞内に速やかに拡散している様子が観察された。以上の結果より、γ-セクレターゼの基質となるペプチドをリポソームに組み込んだLMDP-lipoは、プロテアーゼに応答して内封薬物を速やかに細胞内に放出可能であり、がん細胞内に効率的に薬物を送達するキャリアーとして有用であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、プロテアーゼに応答して薬物を放出するキャリアーの構築とin vitroでの機能性の評価を行うことを目的とした。γ-セクレターゼの基質となるペプチドLMDPをリポソーム膜へ組み込むための脂質組成を最適化することによって、プロテアーゼに応答して内封薬物の放出が促進可能なLMDP-lipoの構築に成功した。また、培養細胞においても内封薬物が放出されることを示し、Time-lapse撮影により速やかな放出が観察されたことから、LMDP-lipoの有用性が示された。このように、計画通り、LMDP-lipoの構築とin vitroでの細胞内放出の評価まで達成しており、おおむね研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、LMDP-lipoを全身投与型核酸キャリアーへ応用するために、核酸(siRNA)を封入し、in vitro及びin vivoでの機能性評価を行う。また、これまでに開発した腫瘍環境の低pHに応答して体内動態及び細胞内動態を制御可能であるSAPSPをLMDP-lipo表面に修飾することでLMDPの機能性を保持しながら血中滞留性を付与したキャリアーを構築し、体内動態を評価する。SAPSPの修飾のみでは腫瘍集積性が不十分である場合は、低分子の親水性化合物(Tris等)を表面に修飾することで、2つの機能性ペプチドSAPSP、LMDPの機能性を保持しつつ、血中滞留性が向上するようにキャリアーを改良する。
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Research Products
(4 results)