2014 Fiscal Year Annual Research Report
in vivo重合により接着性を発揮する分子糊の開発と革新的抗腫瘍剤の創製
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14J09464
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
波多野 淳一 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 分子糊 / 生体直交型反応 / 光重合 / テンプレート重合 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体に作用し、その機能を調節する機能性分子は、生物学的機構の解明や疾病の治療に繋がる。意図しない部位でこれらの分子が作用することは副作用に繋がるため、標的とする部位に選択的に作用させることが望まれる。これを実現するため、従来はドラッグデリバリーシステムやプロドラッグのように元々活性な分子を不活性な状態にして運ぶという戦略が広く用いられてきた。しかし、これらの方法では、活性化と作用が段階的に起こるため、この間に分子が拡散し位置選択性が低下する要因になる。一方、作用させる生体高分子表面で機能性分子を直接構築することができれば、活性化と作用が同時に起こるため、より位置選択的な機能発現が期待されるが、このような方法論は過去に確立されていない。本研究ではその概念実証として、テトラゾールとオレフィンの生体直交型光反応を用いて低接着性の一価性の分子糊モノマーをオキシアニオン表面上でテンプレート重合することで、高接着性の多価性分子糊ポリマーを高度に位置選択的に生成・接着させることに成功した。 モノマーを細胞に投与して光照射した場合に細胞死を引き起こすことにも成功しており、これは必要な場所でin situで機能性分子を作り出すというアプローチが次世代の投薬治療法となりうることを提示している。前駆体のモノマーの小ささを考慮すると、本研究の方法論は小分子のみが通過できるような脳癌のような難治性の病気への、新しいタイプの化学療法を提供することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子糊モノマーのもつテトラゾールへの光照射によって生じるニトリルイミンが、オレフィンの非存在下では溶媒の水によってクエンチされることを利用して、モノマーが濃縮されるテンプレート表面では重合、濃度の薄いバルク中ではクエンチするという差を生み出し、高度に位置選択的な接着を実現できたから。
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Strategy for Future Research Activity |
脳毛細血管に存在する血液脳関門と呼ばれる異物排斥機構は、生命活動に必須な栄養素などを除く大部分の物質の通過を制限するため、脳腫瘍を始めとする脳疾患の投薬治療における最大の課題となっている。血液脳関門を通過するための条件は明確ではないが、一般的に低分子量、カチオン性の化合物が有効とされている。本研究における分子糊モノマーが上記性質を併せ持つため、その脳内郵送特性を評価し、また二光子吸収過程を経る重合が可能かどうかについて検討する。
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Research Products
(4 results)