2015 Fiscal Year Annual Research Report
北東アフリカにおける牧畜民の持続可能性と国際協力:情報技術を活用した広域的分析
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14J09525
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
阪本 拓人 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 特別研究員(PD) (40456182)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 牧畜民 / アフリカ / マルチエージェント・シミュレーション / 衛星画像解析 / 国際協力 / 持続可能性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度は概ね順調に研究活動を実施できた。まず、年度前半(2015年4月~9月)は、前年度に引き続きスイスの連邦工科大学(ETH)に客員科学者として滞在し、社会シミュレーションやデータ解析の先端的手法の習得に努めるとともに、アフリカの乾燥・半乾燥地域の衛星画像データの収集を進め、植生状態の分布の抽出など解析作業を行った。また、牧畜民の季節移動と土地利用をシミュレートするエージェントベース・モデルを構築し、様々な状況設定のもとで走らせたほか、先述の衛星画像解析から得られた植生分布のデータをモデルに読み込むことで、現実のアフリカを近似した生態環境のもとで牧畜民の振る舞いを分析することが可能になった。 ETH滞在期間の中盤以降、このような研究作業の中から生まれた成果を積極的に発信することに努めた。フィンランドとギリシャでの計算社会科学関連の国際的な集まり、ETH内部での計算社会科学関連・開発経済学関連のセミナー、イタリア・トレビーゾのベネチア大学での小規模セミナーなど、さまざまな場で研究成果の内容について報告し、多様な分野の研究者から助言や批評を得た。これらをふまえて、年度後半(2015年10月以降)にかけて成果を学術論文の形にまとめ、海外査読誌に投稿し、年度末までに二本の論文が受理、掲載されるに至った(「研究発表」を参照)。 本研究の残された課題のひとつは、構築したモデルから得た仮想的な牧畜民の振る舞いを評価するための実データの取得である。すなわち現実の牧畜民の季節移動や土地利用の定量的なデータを集めることであるが、これについても今年度内に着手している。2016年3月に三週間、ケニアのリフトバレー州バリンゴ県を訪れ、当地の牧畜民ポコットの家畜キャンプの移動をGPS測定するとともに、ポコットの牧童や家畜主からキャンプの移動とその背景・制約要因について詳細な聞き取りを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた牧畜民の移動や土地利用に関するシミュレーションが実行段階へと移り、またそこから得られた知見を着実に研究成果へと結びつけることができた点で、本課題の研究活動は順調に進展していると言える。また、アフリカ牧畜民に関する現地調査に着手できたことも研究計画推進上大きな意味を持っている。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究業績の概要」に記したように、本研究の残された大きな課題の一つは、シミュレーションモデルの振る舞いを評価する実データの取得である。2016年度はエチオピア南部を始め、現地調査を積極的に行うことで牧畜民の移動と土地利用に関する定量的なデータの収集に努めたい。
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Research Products
(6 results)