2015 Fiscal Year Annual Research Report
第二次大戦後の国際秩序・米外交政策・テロリズム研究の相互作用に関する社会学的研究
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14J09782
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河村 賢 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | テロリズム / 科学社会学 / 国際政治学 / 国際法 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究によって、ブッシュ政権の「対テロ戦争」政策におけるならず者国家とテロリストの組み合わせを重大なものと理解する脅威認識は、クリントン政権期のテロリズム研究者たちに由来する「新しいテロリズム」論と、保守系シンクタンクAEIに所属した研究者たちに由来する国家支援テロリズム論の双方を組み合わせる形で成立したことが明らかになった。こうした脅威認識は、テロリズムを支援する国家に対する武力行使を各国固有の自衛権に基づいて正当化するというレーガン政権以来の国際法的論理と結びつくことで、予防戦争論という極めて攻撃的な安全保障政策へと至ったのだった。 今年度は、この成果を踏まえてさらに二つの課題に取り組んだ。第一に、予防戦争論の形成へと繋がったテロリズムの脅威についての認識、それに対する合理的な戦略、そうした戦略を正当化する国際法的論理の三者間の相互作用を捉えるための理論枠組の再構築を試み、それらを知識社会学における相互反映性の議論によって分析できるという見通しを得た。 第二に、そもそもレーガン政権においてテロ支援国家に対する武力行使が必要な政策として採用されるに至った経緯においても同様にこの相互反映性の問題が生じたことを明らかにし、特に「民主的多数派のための同盟(CDM)」と「現在の危機に関する委員会(CPD)」といった1970年代に活発に活動した政治団体が、従来の国際法的秩序から外れる存在としてのテロリズムという脅威認識の形成に大きな役割を果たしたことを分析した。この分析を行うために、テキサス州オースティンのジョンソン大統領図書館にあるCDM関連資料とカリフォルニア州スタンフォードのフーヴァー研究所にあるCPD関連資料の調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究全体を導く脅威認識・安全保障戦略・国際法の相互反映性を分析するための理論枠組について、おおよその見通しを得る事ができた。また、本研究が扱うテロリズムについての相互反映性の問題の出発点にあたる、1970年代に端を発するテロリズムについての脅威認識・国際法的扱いの転回について、具体的な政治団体の活動に照準を絞り、資料の収集とその分析を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に至るまで行ってきた、1970年代におけるテロリズムについての脅威認識の転回と、1990年代から2001年の9.11テロ後の「対テロ戦争」政策の成立過程についての分析を踏まえ、次年度は1980年代のレーガン政権の成立から冷戦の終結と国際秩序の再編期におけるならず者国家概念の変容過程を分析する。これによって本研究計画が描いた当初の予定は、ほぼ終了すると考えている。
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Research Products
(2 results)