2014 Fiscal Year Annual Research Report
青森県津軽方言の自然談話コーパス構築と総合的記述研究
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14J09887
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大槻 知世 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 津軽方言 / 文法記述 / 体系的記述 / 自発 / 自発接尾辞 / 「サル」 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に基づき、津軽地方の各地域で調査を行った。一部の地域では協力を取り付けていた話者の都合が変わり協力が得られなくなり、代わりの協力者を探す必要が生じた。このため計画の達成に当初よりも月日を要したが、計画していた調査を実施し、人称代名詞や文末表現、動詞の体系、自発接尾辞に関するデータを得た。調査で得た結果を基に自発接尾辞の「サル」に関する研究を進め、進捗報告として2014年の日本言語学会秋季大会にて口頭発表を行った。 具体的には、この自発接尾辞は接合する動詞の結合価を減らして一つにする(自動詞化する)はたらきをもち、意味的には自発、可能、一種の受身、尊敬などを表す。同様の接辞は津軽方言以外にも北海道や東北など東日本に広く存在し、語彙的なレベルでは九州地方にも同様の形式が見られる。本研究では、津軽地方内部での自発接辞「サル」の用法の異なりを明らかにした。中でも、津軽地方の北端にある今別町(いまべつまち)では、他の地域の津軽方言では見られなかった使役受身の用法があることを本研究で初めて指摘した。そして、この用法が「サル」の由来を解明する手がかりであると考え、「サル」がかつて京阪地方で用いられた中古の日本の標準語である中央語の形式に起源をもつ可能性を提案した。 本研究は津軽方言の動詞体系および自発接尾辞をはじめとする動詞周辺の文法項目を追究し、最終的な研究目的である津軽方言の文法記述、文法概要の執筆の根幹部分を担うものである。さらに、自発接尾辞のはたらきに類した動詞の結合価の減少という現象は、動詞の結合価増加という反対の現象とともに、日本の方言だけでなく世界の言語にも一定の地域的分布傾向をもちながら散在して確認される現象であり、実際に国立国語研究所でもプロジェクトが運営されている。方言学的研究のみならず、一般言語学的研究にも本研究は貢献しうる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度において、当初調査に協力してくださる予定だった話者の方に都合の変化があり、ご協力いただけなくなった。このため新たに協力者を探す必要が生じた。新しい調査協力者の津軽方言母語話者を確保するまでに予定外の月日を費やすこととなり、計画よりはやや遅れることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
計画に比して時間的に遅れは生じたが、調査内容自体は当初の計画を概ね達成していると言える。よって今後は得られたデータを精査・整理し、今後の追加調査が必要な部分を洗い出し、体系的記述に必要なデータを揃えて文法概要の大筋を執筆することで研究を推進する。
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Research Products
(2 results)