2014 Fiscal Year Annual Research Report
多粒子系における量子連続測定の統計的性質とエンタングルメントへの応用
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14J09905
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
倉持 結 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 量子測定 / 量子情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)相対エントロピーの保存則 CP instrument Yで記述される量子測定過程において被測定系のあるPOVM Xに関する情報が保存する条件を導き,この条件を満たすXとYにたいして,相対エントロピーの保存則が成り立つことを示した.このような量子測定過程におけるオブザーバブルの情報の保存に関する先行研究には,番雅司 氏によるシャノンエントロピーに着目したものが存在しており,その研究においてXとYに対してある条件のもとにシャノンエントロピーの保存則が成り立つことを示した.以上の結果をYK and M. Ueda, Phys. Rev. A 91, 032110 (2015)に発表した. (2)共鳴二準位原子を用いた直行位相振幅の量子非破壊測定 1モード光の直行位相振幅に対する量子非破壊測定の共鳴二準位原子を用いた実現方法を考案した.この測定法は,基底状態と励起状態の重ねあわせ状態で,ヒルベルト空間の元として直交する状態にある多数の原子を,交互に被測定系の光子場と相互作用させると,1つの原子の相互作用時間が短くなる連続測定極限において,実現される.相互作用後の原子は,測定前の原子の状態と,ブロッホ球上において直交する方向の重ね合わせ状態に対応する方向に射影測定することで,直交位相振幅の情報がよく得られることが判明した.この測定方法の非自明な点は,相互作用ハミルトニアンが測定しようとする物理量と非可換で,量子非破壊条件を満たすプローブ原子の状態を上手く選ばなければならない点にある.現在は,プローブ原子と光の相互作用時間が有限であることによる,連続測定極限からのずれ,特に多数の原子と相互作用したときの漸近的振る舞いについて考察している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では,量子測定において観測結果から得られる情報量と情報の読み出しに伴う波束の収縮の関係に関する研究を行い、両者の間にある種の保存則が成立することを相対エントロピーを用いることで明らかにし、また、その結果を量子光学分野で用いられている様々な測定法に適用して、上記の保存則が実際に成立していることを示した。上記内容については専門誌に査読付き論文を発表した.量子力学における状態変化は非ユニタリーであり、その本姓については様々な議論がなされてきたが、本研究はそれに定量的な観点から示唆をあたえるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究成果を踏まえ,与えられたインストゥルメントに対して,保存されるようなPOVMを一般的に構成する方法について考察する.また,測定によって得られる情報を表すPOVMの一般的な構造を,古典情報処理による同値類および数理統計学の方法を用いて考察する.
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Research Products
(2 results)