2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J10080
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
寺沢 拓敬 東京大学, 社会科学研究所, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 国際情報交換 / イギリス / 日本社会 / 英語使用 / 英語教育 / 計量社会学 / 社会調査 / 第二外国語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に、英語に関する現代日本人の行動・態度について社会科学的な観点から計量分析に取り組んだ。特に、ランダム抽出標本等による社会調査データの二次分析を用いて、日本人の平均的な行動・態度を包括的に明らかにした。具体的には、次の点を明らかにした。(1)早期英語学習経験の英語力獲得への影響、(2)英語教育やいわゆる第二外国語に対する日本人の世論の特徴、(3)日本社会における英語使用者・英語学習者の特徴、(4)英語使用ニーズの正確な把握および今後の使用ニーズの趨勢予測、および(5)英語教育学・応用言語学への社会科学の適用可能性である。なお、一連の研究の集大成として、『「日本人と英語」の社会学』(2015年1月、研究社、単著)を出版し、学術成果を一般の人々にもアクセスしやすい形で提供している。 上述の検討の結果、先行研究では明らかではなかった新規な知見が得られた。たとえば、日本社会における早期英語学習経験の終局的効果については長らく不明なままだったが、分析の結果、劇的ではないものの何らかの効果が存在することが明らかとなった。また、早期英語教育を支持する世論の構造についても詳細な分析はなされてこなかったが、いくつかの異なる因子から構成されることが明らかとなった。また、日本社会における英語使用ニーズの実態および今後の趨勢を丁寧に検討し、政府が考えるほどにはニーズは浸透しておらず、また急増する見込みも薄いことを明らかにした(なお、この知見を踏まえて、実態に則した英語教育政策をいかに構想するかについてもあわせて議論している)。 以上の検討を通じて、日本人と英語の関係性について、従来に比してより妥当な日本社会像を提示し、今後の学術的議論・教育政策論議への示唆を提示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は現代および戦後の英語観の検討を目的としているが、2014年度は主に「現代」に焦点をあて、日本人の英語をめぐる行動・態度の全体像を計量分析を用いて明らかにできた。研究課題を構成するおよそ半分の内容が明らかにできたという点で、本研究は順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
2014年度の現代日本人の英語観に関する研究を踏まえ、今後は、以下のテーマの検討を進めたい。第一に、戦後の日本人の英語観である。文献資料や過去の統計資料を網羅的に分析することで、戦後の英語観の推移を明らかにしたい。第二に、英語観の理論化である。本研究成果を国際的・普遍的な知見に鍛えていくためには、日本社会を専門にする研究者だけでなく、その他の研究者にも共有可能な知見を提示することが重要であり、その際、「理論」が重要になる。この目的のもと、他国の研究者にも共有可能な普遍性の高い理論にもとづいて、日本人の英語観の独自性・共通性を再度議論したい。
|
Research Products
(8 results)