2015 Fiscal Year Annual Research Report
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14J10187
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大久保 勇輔 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 共形場理論 / Macdonald多項式 / Nekrasov分配関数 / AGT予想 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度もAGT予想と呼ばれる予想について研究を行った。AGT予想とは2次元共形場理論の相関関数と4次元ゲージ理論の分配関数が一致するという、全く別の2つの理論の関係性を述べた驚くべき予想である。さらにこの両者をq-変形した理論の間にも類似の対応があることが知られている。つまり変形Virasoro 代数やDing-Iohara-Miki 代数と5次元ゲージ理論との間に特殊な関係性(5 次元AGT 予想) がある。変形Virasoro 代数やDing-Iohara-Miki代数はMacdonald 多項式という直交多項式と非常に相性がよく、近年この多項式を用いたAGT 予想への様々なアプローチがなされている。ちなみにMacdonald 多項式はJack 多項式とHall-Littlewood 多項式という直交多項式を一般化した多項式であるが、Jack 多項式への極限は5 次元AGT予想から4 次元版AGT 予想への極限と一致する。 5 次元AGT予想を深く理解するための足掛かりとして、本年度は主に5 次元AGT 予想のHall-Littlewood 多項式への極限においてどのような振舞いをするかについて考察した。AGT予想を証明することは非常に難しい問題であるが、本年度は特にpureゲージ理論に対応する5 次元AGT予想のこの極限における証明を与えた。 また極限をとる前の一般の場合における代数の表現論についても研究を行った。具体的にはDing-Iohara-Miki 代数の一般のレベルN 表現に対してそのKac 行列式の予想を与え、N = 2 における特殊な場合の証明を与えた。(未発表)さらにKac 行列式の零点は表現空間上の特異ベクトル(表現の既約性を判定する重要なベクトル)の存在を示唆するが、その特異ベクトルがMacdonald 多項式のある種の一般化と一致することを発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Macdonald多項式や変形Virasoro代数はqというパラメータを持っているのだがが、q=0極限をとることによってHall-Littlewood多項式への退化を得ることができる。当初はq=0極限では物事は単純化され、問題を解決することがもっと簡単化されると予期していた。実際、物事は簡単化されるが、最高ウエイト表現をとる際の最高ウエイト u がq依存性を持つ場合とそうでない場合で状況が大きく変化し、その場合分けで相当な困難が生じることが分かった。しかしuがqに依存しない場合では上述したように一定の成果を得ることができた。 またパラメータqがgenericな場合においても表現の既約性を判定するKac行列式やその特異ベクトルについてある程度の発見があったので、研究はおおむね順調に進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、最高ウエイトuがq依存性を持つ場合においても、どのような振舞いをするかについて調べる。単にq依存性を持つ場合でもその依存の仕方でさらに場合分けが必要だが一つ一つ具体的に調べていく。また変形Virasoro 代数を対称性に持つRSOS 模型と呼ばれる統計模型ではパラメータq は温度に対応しており、q = 0 極限は絶対零度に対応する。この物理的な背景と物事を簡単化するという動機は量子群の結晶基底におけるそれと全く同じであるが、数学的な関係性についてはよく分かっていない。今後はこの極限において、量子群の結晶基底との関係性やそれと類似の数学的構造が表れないかについて調べる。 またqがgenericな場合における研究も継続して行う。特にDing-Iohara-Miki代数の一般のレベルN 表現に対するKac行列式の証明や特異ベクトルの持つ性質についての研究を完成させる。Kac行列式の証明の本質的な部分は変形W_N代数のそれと同じであると考えられるので、その場合をモデルにして考えることができる。また特異ベクトルの持つ性質についてはq=1極限において、SH^c代数という代数を用いた先行研究があるのでそれを参考にする。 また近年Ding-Iohara-Miki代数の余積の持つ構造やそのR-行列が可積分系などの分野で注目されている。今後はDing-Iohara-Miki代数のR行列の構造やそれによる結び目の不変量などについても調べていきたい。
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Research Products
(5 results)