2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J10192
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
堀江 美記 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 二重らせん / カルボン酸 / アミジン / キラリティ / 架橋 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者はこれまでに、連結部位に白金錯体を有するアキラルなアミジンおよびカルボン酸二量体からなるラセミの相補的二重らせん分子に対し、キラルな二座配位子を加えることで、白金錯体部位の配位子交換を行い、二重らせんの分子鎖間が架橋された新規二重らせんを合成している。また、架橋部位に導入したキラリティの影響により、二重らせんの巻き方向を制御可能であることも明らかにしている。本研究では、新たにアミジンの置換基にキラリティを導入することで、得られる二重らせん分子に存在する2種類のキラリティが巻き方向にどのような影響を及ぼすかについて検討した。 キラルなアミジン基を有する一方向巻きに片寄った二重らせん(1)を合成し、(S,S)および(R,R)体の二座配位子と反応させることで、分子鎖間が架橋された2つのジアステレオマーを得た((S,S)-2, (R,R)-2)。円二色性(CD)スペクトル測定の結果、(R,R)-2は、1あるいは(S,S)-2とは逆のCDの符号が観測され、2つのジアステレオマーは互いに鏡像関係に近いスペクトルパターンを示した。これにより、キラルなアミジン基を有する同一の二重らせんを用いたにも関わらず、(S,S)および(R,R)体の二座配位子により得られた2つの二重らせんは互いに逆の巻き方向を有することから、側鎖のアミジン部位よりも、架橋部位のキラリティが優先的に巻き方向を制御していることが明らかとなった。一方、ラセミの二座配位子を用いた場合、1H NMR測定の結果、反応初期には(S,S)-2が選択的に生成するものの、時間の経過に伴い選択性は逆転し、反応終了時には(R,R)-2が選択的に生成することが分かった。以上の結果は、架橋部位の不斉場が巻き方向を制御するのみならず、キラリティの認識の場としても有用であり、今後、機能性超分子材料の創製における重要な指針になると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、新たにアミジンの置換基にキラリティを導入し、(S,S) および (R,R) 体の二座配位子により分子鎖間を架橋することで得られた2つのジアステレオマーが互いに逆の巻き方向であることを見出し、巻き方向の制御には側鎖のアミジン部位よりも、架橋部位のキラリティの寄与が大きいことを明らかにした。また、ラセミの二座配位子を用いた場合は、一方のジアステレオマーが選択的に生成することも明らかとした。以上の成果は、本年度に論文として発表していることから、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、二重らせん構造に由来する不斉場を利用した、新規な不斉識別材料や不斉触媒の創製を目指し、有機触媒能を有するプロリン等を側鎖に導入した二重らせん分子を設計・合成し、得られた光学活性二重らせん分子の不斉選択的な会合挙動や分子認識能、不斉識別能をNMRや円二色性(CD)、吸収スペクトルを用いて調べる。さらに、プロリン誘導体が導入された二重らせん分子を有機触媒に用いた不斉アルドール反応等を行い、二重らせん分子触媒の反応活性や不斉選択性について調べる。さらに、二重らせんの分子鎖を架橋することで、これまで超分子不斉触媒が機能しなかった溶媒での触媒反応の検討や、架橋部位の長さを変えることで、得られる基質・不斉選択性を制御可能かについても検討する。
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