2014 Fiscal Year Annual Research Report
分子キャビティを活用したニトロキシルとセレノシステインとの反応に関するモデル研究
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14J10203
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
石原 充裕 東京工業大学, 大学院理工学研究科(理学系), 特別研究員(DC2)
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Keywords | 活性窒素種 / ニトロキシル / セレノシステイン / N-ヒドロキシセレネンアミド / 分子キャビティ / 速度論的安定化 |
Outline of Annual Research Achievements |
活性窒素種の一種であるニトロキシル(HNO)が抗酸化酵素の一種であるグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)を不活性化することが報告され、活性中心のセレノシステインとHNOとが反応することで中間体としてN-ヒドロキシセレネンアミド(RSeNHOH)が生成すると提唱されているが、実験的な証拠に基づいた研究は行われていない。そこで、本研究では未だ実験的な情報がほとんど得られていないセレノールとHNOとの反応を解明するべく、その反応中間体と考えられるReSNHOHを分子キャビティによる速度論的安定化を活用して合成・単離し、種々の試剤との反応を通じて、性質の解明を行うことを目的とした。本年度は筆者の所属するグループで独自に開発したキャビティ型立体保護基を活用することにより、セレノールとHNOとの反応中間体として提唱されているRSeNHOHの合成・単離を行った。すなわち、二分子間反応過程によって失活しやすい種々の含セレン高反応性化学種の安定化に有効であったキャビティ型立体保護基(Bpq基)を有するセレノールを、セレノシステインのモデル分子として活用し、ニトロキシル供与体であるAngeli塩との反応からRSeNHOHが生成することを初めて観測した。また、別形式の反応によりRSeNHOHを合成・単離することにも成功し、各種分光分析および質量分析等から同定し、最終的にその構造をX線結晶構造解析により明らかにした。これはRSeNHOHの初めての合成・単離例である。さらに、単離したRSeNHOHを活用することで反応性について検討し、HNO供与体としての性質など興味深い性質を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、キャビティ型立体保護基を活用することでRSeNHOHの合成・単離に成功し、その構造をX線結晶構造解析によって明らかにした。また、合成・単離したRSeNHOHは固体および溶液状態で安定であり外部反応剤との反応についても検討を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度キャビティ型立体保護基を活用することで安定にRSeNHOHが合成・単離できたため、これを活用することでRSeNHOHの反応性についての調査を進める。ニトロキシルによって不活性化されたグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)は、チオールと反応することで再活性型のセレノール部位を再生すると提唱されているものの、その実験的根拠には乏しい。そこで、単離したRSeNHOHをモデル分子として活用し、チオールとの素反応過程の検証並びにセレノールヘの再活性化過程について検証する。また、立体保護効果が及びにくい際のRSeNHOHの性質についてもを明らかとするべく、立体保護基のかさをおとした際の性質についても検討を予定している。
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Research Products
(5 results)