2014 Fiscal Year Annual Research Report
歪み補償系積層ゲルマニウム量子ドットの開発と超高効率太陽電池への応用
Project/Area Number |
14J10268
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
後藤 和泰 東京工業大学, 総合理工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
|
Keywords | 自己形成量子ドット / 分子線エピタキシー / シリコン / ゲルマニウム / カーボン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,歪み補償系の積層ゲルマニウム(Ge)量子ドットの開発に取り組んだ.歪み補償法は,自己形成量子ドットの多重積層化と面垂直方向の近接化が可能となる手法であるが,歪み補償系の積層自己形成Ge量子ドットの作製はまだ報告がなく,実現できれば近年提案された超高効率な太陽電池の原理検証にも役立ことが期待できる.Si基板上の自己形成Ge量子ドットの場合,シリコン(Si)にカーボン(C)を数%混入させた希釈SiCを量子ドット間の歪み補償スペーサー層として用いることで歪み補償系の積層Ge量子ドットが作製できる. 本年度行った具体的な研究内容としては,希釈SiC上の高均一かつ高密度なGe量子ドットの作製,希釈SiCを母材とした積層Ge量子ドットの作製,そして,Ge量子ドット間の面垂直方向の近接化を行った.太陽電池応用に向けて高均一かつ高密度な量子ドットが求められており,我々はこれまでにGeの2.8Å/sの高速堆積と5秒間の成長超中断からなる手法により高均一かつ高密度なSi上のGe量子ドットを得た.希釈SiC上のGe量子ドットの成長の場合は,堆積速度を2.6Å/sとわずかに抑えることにより,サイズ揺らぎ10%程度,1平方センチメートル当たり約1×10の10乗の高均一かつ高密度のGe量子ドットが得られることが分かった.次に,希釈SiCをスペーサー層として用いたGe量子ドットの積層化を行ったが,量子ドットのサイズ揺らぎなどの構造特性と光学特性が悪化した.そこで,Ge量子ドットと希釈SiCの間に2 nmのSi中間層を導入することにより,この構造特性と光学特性の悪化を抑制することができた.さらに,量子ドット間のスペーサー層膜厚を薄膜化することによりGe量子ドット間の近接化に取り組み,Siを母材としたGe量子ドットと比較して,歪みの伝搬・蓄積による量子ドットサイズの増大などが抑制されていることを確認した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究計画では,①希釈SiC上の単層Ge量子ドットの成長,②希釈SiC上の高均一かつ高密度な単層Ge量子ドットの形成,③希釈SiCを母材としたGe量子ドットの積層化,④希釈SiCを母材とした積層Ge量子ドットの近接化を行う予定であった.実際に希釈SiC上にGe量子ドットの成長を行い,堆積速度2.6Å/sを用いることによりサイズ揺らぎ10%以下,密度が1平方センチメートル当たり約1×10の10乗の高均一かつ高密度なGe量子ドットの作製できた.そして,希釈SiCを母材としたGe量子ドットの積層化も行い,Ge量子ドットと希釈SiCスペーサー層の間に2 nm厚のSi中間層を導入することで,Ge量子ドットの構造特性と光学特性の悪化を抑制できることが分かった.さらに,積層Ge量子ドットのスペーサー層の薄膜化による量子ドットの近接化を行い,希釈SiCスペーサー層を用いることで,近接化に伴う歪みの伝搬・蓄積による量子ドットサイズの増大などの構造特性の顕著な変化が抑制されていることを確認した.また,これらの成果を論文としてまとめ,Journal of Crystal Growthに掲載が認めれられた.以上のように,当初計画していた研究を行い,一定の成果も出すことができたため,本年度の研究はおおむね順調に進んでいると考えられる.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は,希釈SiCを母材とした積層Ge量子ドットを吸収層として用いた太陽電池を作製し,Siを母材とした積層Ge量子ドット太陽電池と比較することにより,歪み補償系の積層Ge量子ドットの有意性を見出していく.具体的な目標としては,100層積層歪み補償系のGe量子ドット太陽電池を作製し,Ge量子ドットの吸収による明瞭な外部量子効率の観察することに加えて,現在まだ到達していない変換効率10%を目指していきたい.そのために,平成27年度は,①Siを母材とした多重積層Ge量子ドットの作製,平成26年度の成果で得られた希釈SiC母材の積層Ge量子ドットの作製方法を用いて②希釈SiCを母材とした多重積層Ge量子ドットの作製,③両母材をそれぞれ用いた多重積層Ge量子ドットの太陽電池の作製を行い,歪み補償希釈SiCスペーサー層が太陽電池特性に与える影響を調査する.また,積層Ge量子ドットを太陽電池として用いた際,積層Ge量子ドットの成長条件を僅かに修正し,太陽電池の特性に合わせて最適化を行う必要が生じると予測している.
|
Research Products
(4 results)