2014 Fiscal Year Annual Research Report
沈み込み帯・地震発生帯分岐断層の水理特性と岩石・流体相互作用の検証
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14J10283
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
濱橋 真理 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | プレート沈み込み帯 / 地震発生帯 / 断層岩 / 構造地質学 / 岩石物性 / 国際統合深海掘削計画 / 国際研究者交流 / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
プレート沈み込み帯の水理特性・流体の役割を明らかにすることは、地震発生帯で起こる物理化学過程や流体圧による断層面弱化を理解する重要な手がかりとなる。本研究は九州四万十帯・延岡衝上断層およびコスタリカ沖沈み込み帯堆積物を対象として天然の断層帯における強度変化・間隙率・透水率の発展式を再考する。平成26年度は、主に掘削コア試料を用いた間隙率・比抵抗・弾性波速度の測定および変形構造・組織観察を行なった。 延岡衝上断層の上盤と下盤の破砕帯は、剪断集中帯が母岩に対し高い間隙率と低い地震波速度・比抵抗を示し、周囲の面状脆性岩が低い間隙率と高い地震波速度・比抵抗で特徴づけられる(Hamahashi et al. 2015; Published in Earth, Planets and Space)。断層密度と物性の間に相関関係が見出されたことから、剪断集中帯において歪弱化が起こり周囲の脆性岩で歪強化が起きていることが示唆された。前弧域深部に発達する断層帯では、このような脆性岩に囲まれた剪断集中帯が高間隙流体圧を形成し、その圧密固結過程は変形・歪の蓄積によるものであると考えられる。 一方、コスタリカ沖の上盤プレートに発達する大規模不整合においても、同様に特徴的な圧密固結過程が見出された。IODP第344次航海で掘削された斜面では、シルト質粘土からなる斜面堆積物(Unit 1)は下部の粘土質シルト岩(Unit 2)よりも高い間隙率・低い地震波速度, 比抵抗で特徴づけられる。Unit 1の主要な構成鉱物は層状珪酸塩・石英・斜長石・方解石・濁沸石・輝沸石であり、深さに応じて堆積による圧密を受けているが、Unit 2の鉱物組成はUnit 1と比べて方沸石・緑泥石が多く粘土が少なく、小さい粒子が大きい岩片粒子の間隙を埋める構造が観察された。今後、堆積・変形の効果を詳細に調べ、不整合の要因を検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、延岡衝上断層およびコスタリカ沖沈み込み帯堆積物の掘削コア試料を用いた間隙率・比抵抗・地震波速度の測定およびクラックの形状測定により変形破壊に伴う構造・組織観察を行なった。年度計画であった延岡衝上断層の物理検層データの間隙率・比抵抗値・地震波速度の大小関係の検証、深度ごとのコア試料の母岩・断層岩・鉱物脈の間隙率・比抵抗・地震波速度の測定、および偏光顕微鏡・走査型電子顕微鏡を用いた内部組織および互いの境界面の微細構造観察は計画通りに進行した。 また、コスタリカ沖地震発生帯・オサ半島周辺における上盤プレート中に発達する大規模断層・不整合の物性境界およびデコルマ帯の形成過程を明らかにするために、IODP第344次航海で掘削されたSite 1380における斜面堆積物底部の不整合面に着目し、比抵抗の測定、陸源堆積物の偏光顕微鏡・走査型電子顕微鏡観察、エネルギー分散型X線分析、回折X線分析、蛍光X線分析を行なった。斜面堆積物とその下部の上盤構成物質の間の明瞭な物性コントラストが見出され、物性変化が堆積物の粒径・微細組織・化学組成の差異に対応していることが示された。堆積環境・変形構造・化学反応・岩石物性の間に、物性境界の形成要因を示す重要な関係が存在することが明らかになった。 沈み込み帯深部と浅部の物性・構造を比較検討するために、延岡衝上断層とコスタリカ・オサ半島沖沈み込み帯、さらに南海トラフ・日本海溝・バルバドスリッジ・コスタリカニコヤ半島沖・台湾・ニュージーランドなどとの比較研究を前進させ、今後の研究の重要な仮説構築・着想の手がかりを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
プレート沈み込み地震発生帯における水理特性と流体の役割を検証するために、今後延岡衝上断層およびコスタリカ沖沈み込み帯堆積物の透水率測定、詳細な微細組織と化学組成分析、温度圧力測定、定量化した歪と総合した数値解析を行う。 ①物理検層・試料測定データの間隙率と比抵抗値が示唆する透水率の大小関係を確かめるために、延岡衝上断層の破砕帯における深度ごとの母岩・断層岩・鉱物脈の透水率・間隙率・比抵抗を、掘削コア試料を用いて封圧下(~80MPa)で測定する。その上で、内部組織および互いの境界面の微細構造観察を偏光顕微鏡・走査型電子顕微鏡を用いて行なう。 ②深度ごとの母岩・断層岩・鉱物脈における元素組成分析・同位体分析を電子線マイクロアナライザおよびICP質量分析計によって行い、元素移動量・流体移動量の定量化、岩石水相互作用の度合いを比較する。偏光顕微鏡・走査型電子顕微鏡(SEM)観察・エネルギー分散型X線分析(EDS)、回折X線分析、蛍光X線分析を用いて構成鉱物・元素組成を検証する。 ③上記①で求めた透水率から、有効応力を仮定して変形時の断層岩・堆積物の流体圧変化を数値計算により導出する。さらに、断層岩に分布する鉱物脈(石英・方解石)に含まれる流体包有物(気液2相)の加熱冷却実験を行ない、気相が消失した時点の均質化温度から破砕帯に流れた流体の温度・圧力を推定する。 ④ 上盤破砕帯と下盤破砕帯の形成過程における流体の通り道・岩石流体反応・破砕帯の伝搬についてモデル化を行なう。断層・鉱物脈形成と水理特性・流体移動の空間分布・温度圧力条件、時間軸、定量化した歪を総合し、数値解析によりプレート沈み込み帯分岐断層・大規模断層帯における水理特性と岩石流体相互作用を検証する。 *以上の研究成果は国内・国際学会および学術雑誌に発表する。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Multiple damage zone structure of an exhumed seismogenic megasplay fault in a subduction zone -a study from the Nobeoka Thrust Drilling Project2015
Author(s)
Hamahashi M, Hamada Y, Yamaguchi A, Kimura G, Fukuchi R, Saito S, Kameda J, Kitamura Y, Fujimoto K, Hashimoto Y
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Journal Title
Earth, Planets and Space
Volume: 67:30
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Changes in illite crystallinity within an ancient tectonic boundary thrust caused by thermal, mechanical, and hydrothermal effects: an example from the Nobeoka Thrust, southwest Japan2014
Author(s)
Fukuchi R, Fujimoto K, Kameda J, Hamahashi M, Yamaguchi A, Kimura G, Hamada Y, Hashimoto Y, Kitamura Y, Saito S
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Journal Title
Earth, Planets and Space
Volume: 66:116
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Friction properties of the plate boundary megathrust beneath the frontal wedge near the Japan Trench: an inference from topographic variation2014
Author(s)
Koge H, Fujiwara T, Kodaira S, Sasaki T, Kameda J, Kitamura Y, Hamahashi M, Fukuchi R, Yamaguchi A, Hamada Y, Ashi J, Kimura G
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Journal Title
Earth, Planets and Space
Volume: 66:153
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] The influence of organic-rich shear zones on pelagic sediment deformation and seismogenesis in a subduction zone2014
Author(s)
Kameda J, Kouketsu Y, Shimizu M, Yamaguchi A, Hamada Y, Hamahashi M, Koge H, Fukuchi R, Ikeda M, Kogure T, Kimura G
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Journal Title
Journal of Mineralogical and Petrological Sciences
Volume: 109 (5)
Pages: 228-238
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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