2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J10284
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北村 未歩 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 酸化物ヘテロ界面 / ペロブスカイト酸化物 / 電子状態 / バンドダイアグラム |
Outline of Annual Research Achievements |
強相関酸化物ヘテロ界面は、特異な電子・磁気状態を発現することから、基礎及び応用の両面から精力的な研究が行われている。近年、”p型”のモット絶縁体であるLaMnO3(LMO)とn型のバンド絶縁体であるNb:SrTiO3(STO)との超格子において、界面強磁性の発現や強磁性変調が報告された。この特異な界面電子・磁気状態の制御やそれを利用したデバイスの設計のためには、酸化物ヘテロ界面のバンドダイアグラムに関する理解が必要不可欠である。そこで本研究では、X線光電子分光(XPS)を用いて、LMOとSTOとの接合界面のバンドダイアグラムとそのドナー濃度依存性を実験的に決定した。 試料の作製には、レーザー分子線エピタキシー法を用いた。ドープ量の異なる2種類のNb:STO基板上に膜厚の異なる複数のLMO薄膜をエピタキシャル成長させ、XPS測定を行った。 Nb:STO基板上にLMO薄膜を堆積すると、下地の基板由来のTi 2p内殻光電子スペクトルは低結合エネルギー側にシフトする。このシフト量はビルトインポテンシャル(Vb)のNb:STO側に形成される分に対応するため、XPSを用いて検出することができる。このシフト量とNb:STOのドナー密度から、半導体のp-n接合理論を用いてVbとLMO薄膜のホール濃度を算出し、バンドダイアグラムの作成を行った。これらの結果から、モット絶縁体LMOとバンド絶縁体Nb:STOにおける接合は通常の半導体のp-n接合理論の枠内で記述できると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究によって、光電子分光を用いた酸化物へテロ界面におけるバンドダイアグラムの決定に成功し、界面電子状態の理解を得ることができた。この結果を米国物理学会の学術誌Applied Physics Lettersに発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
酸化物へテロ構造における界面強磁性には、界面電荷移動が重要な役割を果たしていると考えられる。そこで今後の展開として、界面電荷移動と界面強磁性の関係を明らかにすることを目的として研究を進める。具体的には、X線吸収分光を用いて、界面電荷移動による遷移金属イオンの価数変化を直接評価し、さらにX線磁気円二色性を用いて、遷移金属イオンの磁化状態を元素選択的に評価する。
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Research Products
(6 results)