2014 Fiscal Year Annual Research Report
結社から見た地域活性化のプロセスの解明-協働のまちづくり論の再構築へ向けて
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14J10321
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
嶋田 吉朗 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 経済団体 / 市民社会 / 地域活性化 / 伝統文化 / 国際比較 / 地域社会 / 自発的結社 / 経済と市民社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の成果は大きく分けて以下三点である。 1.日独2カ国での調査により、戦後の同時期にそれぞれの国で立ち上げられた青年経営者・経営後継者の組織としての青年会議所(どちらも国際青年会議所を上部統括組織として頂いている)について、商工会議所から支援を受けつつも独立が進み、また経済領域外の活動へとシフトしていった日本と、全国から地方組織に至るまでスタッフの共有など商工会議所との強い結びつきが維持され、経済団体としての自意識を強く残すことになったドイツという異なる組織発展のプロセスが明らかとなった。 2.商工業者の結社が関わった結社が関わった地域活動事例として、従来から調査を行っていた福岡県飯塚市の伝統的な祭である「山笠」に関するデータ収集を追加で行い、これまでの知見を加えて論文にまとめ、関東社会学会の『年報社会学論集』への投稿を行った(現在査読中)。加えて埼玉県深谷市にて、1990年代に衰退しつつあった伝統行事「八坂まつり」を活性化させるために深谷青年会議所が介入し、新たな「深谷まつり」として再構築していく過程について複数の関係者へのインタビューを中心に調査を行ってきた。青年会議所を卒業した祭運営関係者と現役会員との対立を背景として、結果として青年会議所祭の活動からの撤退と自治会や青年部等の旧来型の担い手の立場の強化へ至ったという経緯が観察された。 3.経営者層と市民社会に関する既存研究について、特に日本では殆ど紹介されていないアメリカの”Community Development”研究の論者(ヘイイングら)の議論について知見を深めた他ハッケやホフマンなどのドイツ近代史学者によって提示されている具体的な歴史的負荷を前提とする市民層と市民社会についての議論や知見を参照し、報告者の扱う事例との接続点についての考察を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査については特に国際比較に関して、当初に想定していた以上の情報をドイツにおいて得ることができ、青年会議所と商工会議所という相互に関連の深い経営者層の結社について国ごとのの成り立ちや目的の類似性と相違点、相互関係などを確認することができた。こうした個別の地域ベースの結社を中心とした国際比較はこれまで地域社会学において行われた例がほとんどなく、非常に意義深いものとなったと言える。 また、以前から調査地としていた飯塚市のみでなく深谷市の商工業者の組織の調査も順調に進めることができた。飯塚と比較可能な伝統行事の再興と商工業者・経営者組織の関わりが深い地域で、具体的な事例としての「深谷まつり」への知見も深まり、今後の比較研究の進展への足がかりとなった。 その一方でこうした調査に注力した結果、成果を広く発表する場は昨年6月の関東社会学会での発表と11月の年報社会学論集への投稿のみにとどまってしまったため、その点については反省すべき点があった。 以上のことから、全体としては概ね順調に進展しているとの自己評価を持っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず青年会議所・商工会議所の国際比較を進展させるため、ドイツ・アメリカでの調査を行いたいと考えている。戦後の設立の経緯が似ているドイツについては既に一定のデータが集まっているが、特に商工会議所に関してはまだ不十分な部分も多く、追加の調査を予定している。また、アメリカについては青年会議所の発祥の地であり、国際青年会議所の設立国でもあるため、現地での調査が必要となる。 深谷市の深谷祭りの調査も継続し、飯塚の比較研究の枠組みを精緻化させる必要もある。そのために現在重要と考えているのは自治会など祭りに関わる青年会議所・商工会議所以外の組織の成り立ちや役割を改めて調査することである。祭に関わる自治組織が一度断絶した飯塚と違い、近世より伝統をを引き継ぐ近隣自治組織を有する深谷については改めてインタビュ-等によってこの実態を明らかにする必要がある。 また、青年会議所から派生した博多21の会という組織について現在まで一定の知見を収集してきたが、まだ本研究全体における位置づけ等が明らかになっていないので、経済領域に根ざした経営者の市民的活動のライフコースの一つとしてミクロレベルで通時的な流の中で捉えるか、地域をフィールドとした共時的な組織間関係の中でメゾレベルで捉えるかといった点に関して、調査と平行して検討を進めたい。 加えて、理論面に関してはトクヴィルからパットナムに至るアメリカ的な市民社会の系譜とハーバーマスや近年のハッケらの西欧の市民社会の議論の系譜の両面について知見を深め、その接続を試みる。 それぞれについて、本年度は学会発表や論文投稿など様々な場でアウトプットもできるよう心がけていく。
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Research Products
(1 results)