2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J10615
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
鹿又 健作 山形大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 原子層堆積 / 赤外吸収分光 / プラズマ / TEMAH / 高誘電率ゲート絶縁膜 / 防蝕 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、原料ガスにtetrakis(ethylmethylamino)hafnium(TEMAH)と酸化ガスにプラズマ励起した水蒸気を用いた酸化ハフニウムの室温原子層堆積の報告がなかった。そこで本研究では原料ガスにTEMAHと酸化ガスにプラズマ励起した水蒸気を用いた酸化ハフニウムの室温原子層堆積プロセスの構築を目指した。はじめに、酸化ハフニウムの室温原子層堆積の吸着と酸化の過程を多重内部反射型赤外吸収分光法によって、その場観察した。この結果から、TEMAH分子はOH基を介して室温において酸化ハフニウム表面に化学吸着することが明らかになった。また、酸化ガスして加湿アルゴンプラズマガスを用いて酸化試験を行った。赤外吸収分光の結果から炭化水素のピークの落ち込みが観察され、TEMAH分子のアミノ炭化水素部分の酸化が確認された。しかし、OH基の形成が確認できず、実際に室温原子層堆積プロセスを行った際にも酸化ハフニウムは製膜されなかった。このことより、加湿アルゴンプラズマガスではOH基の形成が十分ではないことが明らかになった。そこで、本研究ではOH基形成のために水蒸気を生成する際のキャリアガスをアルゴンから酸素にすることで、加湿酸素プラズマガスを生成し、これを酸化ガスに用いることを独自に考案した。赤外吸収分光より、加湿酸素プラズマガスは吸着したTEMAH分子を酸化し、次のTEMAH分子の吸着サイトとなるOH基を形成できることが明らかになった。赤外吸収分光より、酸化ハフニウムの室温原子層堆積プロセスを設計した。分光エリプソメトリーを用いて酸化ハフニウムの膜厚測定を行い、サイクル数と膜厚の関係が線形であることより、酸化ハフニウムがALDモードで製膜されていることが示された。また、成長速度は0.26nm/cycleと算出され、これは従来の熱ALDに匹敵する成長速度が得られたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では酸化ハフニウムの室温原子層堆積の過程を多重内部反射型赤外吸収分光によって観察し、室温において酸化ハフニウムが製膜されない要因を明らかにした。また、OH基形成のために水蒸気を生成する際のキャリアガスをアルゴンから酸素に変更し、プラズマ励起することで加湿酸素プラズマガスを生成した。これを酸化ガスとして用いることを独自に考案した。このことにより、これまで報告がなかったプラズマ励起した水蒸気を用いた酸化ハフニウムの室温原子層堆積を達成するに至っている。また、赤外吸収分光より、酸化ハフニウム表面上におけるTEMAH分子の飽和吸着特性を取得した。この飽和吸着曲線をラングミュアー型吸着モデル、多数サイト吸着モデルによるフィッティングを行い、TEMAH分子が吸着の際に必要とする吸着サイト数を推定した。その結果、TEMAH分子は2つのOH基を介して、酸化ハフニウム表面上に化学吸着することが明らかになった。この吸着サイトフィッティングの結果と赤外吸収分光の結果より、酸化ハフニウムの室温原子層堆積における反応モデルを構築した。本研究で構築した反応モデルは酸化ハフニウムの室温原子層堆積における表面反応の研究分野に有益な情報を提供すると考えられる。本研究の成果は英語論文誌への論文投稿1件、国際会議2件、国内会議1件で成果公開を行っている。さらに、本研究では高誘電率ゲート絶縁膜の用途だけでなく、防蝕コートへの適用も検討を行っている。酸化ハフニウムはフッ酸にも不溶な超難腐食膜であり、防蝕コート技術としても適用可能である。防蝕コートへの適用研究において、フランスのパリステック研究所の研究者と共同研究を行い、TOF-SIMSや電気化学測定を用いた評価から、本研究で室温製膜した酸化ハフニウム膜の防蝕性向上のためのプロセス改良を現在行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
開発した酸化ハフニウムの室温原子層堆積プロセスを用いて、実際にHfO2-Si MOSキャパシタを試作し、I-V測定から絶縁特性を評価し、C-V測定から誘電率を明らかにするとともに、界面準位密度を評価する。また、室温でHigh-k膜が形成できるメリットを活用し、界面偏析を抑えたHfO2-Ge MOSキャパシタの試作を試み、その工業的な有用性を実証したいと考えている。さらに、室温でMOSキャパシタが作製できることから極めて急峻な界面が実現できる可能性があり、サーマルバジェットを極限まで抑えられるため、プラズマ窒化やシリケート層を挿入しても非常に急峻な界面で、かつ界面準位密度も抑えられる可能性がある。プラズマ窒化やシリケート層の挿入などの界面処理法を併用し、室温MOSキャパシタとしての可能性を貪欲に追及していきたいと考えている。加えて、防蝕コート応用についてもフランスのパリステック研究所の研究者と共同研究を継続し、TOF-SIMSや電気化学測定の結果から防蝕性向上を行い、有用性を実証したいと考えている。本研究の成果を米国電気化学会、ALD学会で発表するとともに、論文投稿を行い、成果を公開したいと考えている。
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Research Products
(5 results)