2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J10619
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
寺田 隆広 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 超重力理論 / 宇宙論 / 修正重力理論 / インフレーション / グラヴィティーノ / 単一超場 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に沿って、「F(R)超重力理論における宇宙論的グラヴィティーノ問題の評価」を行った。実際には、F(R)超重力理論と呼ばれているものではなく、より一般の超重力理論の作用を採用した。これは、申請時には前者が超対称Starobinsky模型(重力の効果のみによって宇宙のインフレーションを説明する模型の超対称版)を含んでいると考えられていたが、研究遂行時までにそうではない事が明らかになったためである。いずれにせよ、超対称Starobinskyインフレーション後の宇宙の再加熱の機構と、それに伴う長寿命粒子の生成量の評価を行った。これによって、許される超対称性の破れのスケール(グラヴィティーノ質量)が10^4 ~ 10^5 GeVに制限された。この研究は、修正重力理論と超対称性を融合した理論において初めてインフレーション後の宇宙の再加熱を詳細に調べたという意義を持つ。インフレーションに関してStarobinsky模型と同様の予言をする模型は数多く存在するので、この研究の様に再加熱温度等の性質を調べることは重要である。 交付申請書に記載した宇宙観測実験の結果を説明する取り組みの中で、偶発的に「単一の超場によるインフレーション」の機構を発見した。一般に、超重力理論でインフレーションを起こす事は難しく、工夫を要する。その新たな工夫としてインフラトン場の高次項を導入する事により、通常導入される別の超場を不要にした。高次項を導入するため、広い意味での超重力理論の拡張になっており、研究課題に合致する内容である。この新しく発見された機構では、単一の超場でインフレーションを記述する事ができるので、シンプルかつエコノミカルである。多くのインフレーション模型を超重力理論で実現する新たな枠組みの発見であり、非常に重要な意義を持つ。今後の研究でもこの機構の応用や宇宙論的な帰結等について調べていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究目的・内容の「アクシーノ質量がグラヴィティーノ質量より非常に小さくなる必要十分条件の導出」と、「Horava-Lifshitz重力理論の超対称化」のうち初年度に行う予定だった超対称性代数の拡張が終わっていない。 その代わり、研究実績の概要で述べた様に、特別研究員申請時の研究目的・内容とは別の物であるが研究課題と交付申請書の研究の目的に沿う形で、当初予想していなかった大きな成果が得られた。こちらに時間を割いた事が理由の一つである。
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Strategy for Future Research Activity |
近年の精密観測により、インフレーションを基軸として宇宙初期の素粒子・時空の物理の研究を推し進めていくことが非常に重要になっている。そこで、研究実績の概要で述べた様に、主要な目標を「単一の超場によるインフレーション」の更なる理解と応用に移す。このトピックは、標準模型を超える物理の重要な候補である超重力理論の範疇でインフレーションを起こす新たな機構に関するものである。具体的には、暗黒物質や暗黒エネルギーとの関係、宇宙の再加熱や物質・反物質の非対称性への示唆などを調べる。特に、物質・反物質の非対称性に関しては、インフラトンと右巻きニュートリノとの結合や、Affleck-Dine機構を利用するアイディアがある。最近の発展である螺旋位相インフレーションやα-アトラクターとの関係も探っていく。
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Research Products
(16 results)