2014 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノミックセレクションと作物モデルを組み合わせた新たな統計学的育種モデルの構築
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14J10661
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小野木 章雄 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | ゲノムワイド予測 / 作物モデル / イネ / 開花 / 出穂 / モデリング |
Outline of Annual Research Achievements |
効率的な植物育種や管理において、新しい品種・系統の形態や性質を任意の環境条件において正確に予測することは非常に重要である。そこで本研究では環境及びゲノム情報の両方に基づき、新品種の形態及び性質を予測する統計学的モデルを開発することを目的としている。平成26年度はイネの環境適応において重要である開花期を予測する新たなモデルを開発した。このモデルは開花期を環境情報から予測する既存の作物モデルに基づいている。この作物モデルは3つの品種特異的なパラメータと環境情報から開花期を予測する。新モデルでは新品種についてのこれらパラメータを遺伝情報から予測することと、予測されたパラメータと環境情報から作物モデルを用いて開花期を予測することを同時に行う。これにより新しい品種・系統についてその遺伝情報があれば、任意の環境下での開花期の予測が可能となった。この新モデルは複雑であるが、計算のために柔軟なマルコフ連鎖モンテカルロ法と高速な変分ベイズ法を組み合わせた手法を開発し、現実的な時間内で計算を可能とした。共同研究から得られた日本水稲交雑系統の開花期データを用いてその予測能力を検証したところ、既存の手法より正確な予測が得られることと環境の変化に対して予測が頑強であることが示唆された。この新モデルにより、目的の環境下で理想の開花期を示す新たな品種のデザインや、変動する気候下での開花期のばらつきのシミュレーションなどが可能となり、イネ育種の新たな可能性を示す結果が得られたと考える。研究成果の一部は日本育種学会第126回講演会(南九州大学、9月)において発表した。また現在投稿論文を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度はイネ開花期予測を行う新たなモデルの開発を行い、9月の日本育種学会で発表する計画であったが、これは順調に達成された。また実際のイネデータを用いた予測能力の検証も計画通りに行うことができた。計画では3月に日本育種学会での発表及び論文投稿をする予定で、これは達成できなかったものの、論文は準備中であり近く投稿予定であることから、この目標も概ね達成できていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
新モデルのアプローチが有用であることがイネ開花期において示唆されたため、今後は同様のアプローチをイネの他の農業上重要な性質、例えば草型や収量などに応用していく。また作成したモデルを育種家及び研究者が自由に使用できるように公開プログラムとして整備を行う。
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Research Products
(1 results)